折原家2
□珍しい物
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<珍しい物>
新宿 某マンション
臨也視点
「あれ、ママは?」
「ママねー、わすれものかいに行ったー」
「あれがないとごはんがつくれないっ、ってあわててたよー」
「……そう」
祝日の昼間。
慌てる程の仕事でもなかったのだが、[とりあえず進ませておくか]という軽い気持ちで情報を集めていると、それとは全く違う、気になる情報が手に入ると、それが本当に真実なのか―――
というものが気になり始め、調べたりしているといつの間にか深夜も早朝へと変わり始め、また妻に怒られるな、と溜息を吐き出しながら一度パソコンに保存した後、寝室で眠ったのだが、
気付くと隣にはいつも寝ている彼女の姿はなく、携帯を見ると昼よりも少し早い時間になっており、それまで起きる事無く寝ていた事に驚いた。
だが、過ぎてしまった時間は取り戻す事はできない為、とりあえず1階へと下りて何か食べようと思ったのだが、
いつも俺を迎えてくれる彼女がどこにもおらず、部屋の中には不機嫌そうな秘書と双子の子供達だけであった。
「……貴方、いつまで寝てるつもりなの?愛子がいるからって貴方の仕事が変わったりはしないのよ」
「波江さん……今起きた俺に対してもっと他に言う事はないわけ?俺の秘書なんだしさ、もうちょっと愛想を良くしてくれてもいいんじゃない?」
「貴方に対して愛想を振りまくように見えるかしら。貴方より、まだ子供達の方が愛想を良くしてもいいと思えるわ」
「酷いなぁ、波江さんは」
「パパぁ、おなかすいたー」
「ぼくもぉー!」
秘書である波江さんに説教と言うか、小言というか、そういった言葉を聞きながらいつもの定位置に座り、
昨日集めていた情報をまとめようとキーボードに手を置いた瞬間、今度は二人がぐずり始め、[早くごはんがたべたい]と言わんばかりだ。
「もうすぐママ、帰ってくるんだろう?それまで待ってなよ」
「えぇー……パパ、ごはんつくれるんでしょー?何かつくってー!」
「ママ、いつかえってくるかわかんないもんっ」
「……全く。適当に何かないのかい?本当なら駄目だけどさ、俺今忙しいんだ。ママが帰ってくるまでそれを食べてていいよ」
折角面白い事になりそうなのに―――いつもなら母親が[パパは仕事だから]と言うのだが、
波江さんがそんな事を言うとは思えないので自分の口からそう言うと二人は目を輝かし、とても喜んでいる様だ。
「ほんとーっ!?あたしね、たべたいのがあるの!」
「ぼくもっ!ママはとーとがきらいだからダメって言うんだけど、ぼく、たべたいのがあるの!」
「……は?……ママは俺が嫌いだから、ダメ……?」
一瞬子供達は何を言っているのか理解できなかった。
二人の事だから妻―――折原愛子が隠しているお菓子や自分達のお菓子を持って来て食べるのかと思っていたのだが、二人の言葉に[お菓子を食べよう]という雰囲気は感じられない。
―――何を持ってくるつもりなんだ?
俺の言葉なんて聞いていないかのように二人は許可が出た、とばかりに台所へと走っていき、何か漁っている様だ。
「あまりそこを弄るとママに怒られるよ。俺も前、他の場所に移動させたら怒られたから」
「だいじょーぶっ!あるばしょ知ってるからママにおこられないよ!」
「えーと、えーと……あったぁ!」
「!……それをお前達は食べたいのかい?」
「「うんっ」」
一度愛子が毎日のように使っている台所側にある棚の中身を移動させた事があるのだが、その時は喧嘩になり、結局[移動させない]と決まってから殆ど触っていないのだが、
二人はそんな事は知らない、とばかりに漁っており、色々外に出して探している様だ。