折原家2
□おとどけ物
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注意書き
1月28日にシズちゃんの誕生日をお祝いできなかったので今更ですが、お祝いしたいと思います。
<おとどけ物>
1月上旬 新宿 某所
愛子視点
「ねえ、パパー。パパはしずおさんのおたんじょう日知ってるー?」
「おたんじょう日おしえてー」
「……何で俺に聞くんだい?ママにでも聞けばいいじゃないか」
お正月も終わり、街も少しずつ落ち着いてきた頃、二人は思いついたかのようにいつも座っている椅子に腰かけてキーボードを叩いている父親に向かって問いかけた。
二人の質問は父親にとってはあまり嬉しくないものであり、一瞬渋い顔をしたが答えないわけにもいかない為、素っ気なく返す。
「ママはパパにきいて、って言ってたよー?」
「とーとの方がよく知ってるから、って!」
「……。……確かに俺の方が付き合いが長いだろうし、誕生日だって知ってる。けど……それをお前達に教えて俺の何の得になるって言うの?」
「うーん……たのしいっ、ってなる!」
「……みんなでしずおさんのたんじょう日、おいわいしたらたのしいよー?」
本当なら答えてあげたかったのだが、生憎私は今話題になっている相手―――平和島静雄さんの誕生日を忘れてしまっているのだ。
確か1月だった、というのは覚えているのだが、その後が思い出せない。二桁だったような気もするし、旦那―――折原臨也のように一桁だった気もする。
そんな曖昧な記憶しかない為、臨也に聞いて、と言ったのだ。
二人の[ママはパパに聞いて、って言ってた]という言葉に臨也はジロリ、と私の方を見たが、諦めたのか二人に視線を戻して溜息を吐き出した。
「お前達が俺とシズちゃんの関係を理解してないのは随分前から知ってるつもりだけど……本当に俺が楽しいと思ってるのかい?」
「えええー……たのしくないのー?」
「シズちゃんのたんじょう日会、開いたらたのしいよ!」
「開く事前提、って……。本当にお前達はシズちゃんが好きだよねぇ。どうしてそこまでアイツを好きになれるのか、俺には理解できないよ」
「なかよくしなきゃダメだよー?……それでね、あの……シズちゃんにプレゼントしたいの。だからお金ちょーだい?」
「ぼくもシズちゃんにプレゼントしたいからお金ほしい」
二人は本当に静雄さんに懐いていて―――お泊りに行きたい、と言うぐらい大好きなのだが、それが臨也にとっては気に食わなくて―――
それでも二人には関係のない事なので、こうやって[しずおさん][シズちゃん]と言えるのだが。
「お金、ねぇ。……君達もそろそろ大きくなってきたし、どうしたらお金を貰えるのか、っていうのを学んでいかないとね」
「?パパに言うんじゃないの?」
「ママのお手伝いするのー?」
「……まあそうなんだけどさ、俺だって、ただここに座っているわけじゃない。きちんと働いてお金を貰っているんだ。
だからお前達もシズちゃんのプレゼントが欲しいなら働かないとねぇ」
「はたらく!?おしごとするのー!?」
「やりたいっ!」
「……何でも興味を持つ事は良い事だと思うよ。それじゃあ色々と手伝ってもらおうかな」
いつもなら二人が[あれほしい]と言えば、喜んで買ってあげたり、[あれはいらないだろう?]と言ったりするのだが、今回は静雄さんの誕生日プレゼントだからなのか、少し意地悪だ。
―――素直にお金あげればいいのに……。
「じゃあ……少し待っててくれるかい?用意したいものがあるから」
「「?」」
そう言うと彼は真っ白なA4ぐらいの紙を一枚取り出し、何かを書いている。二人も良く解らない、と言う顔で父親に言われた通り、待ちながら首を傾げていた。