折原家2

□パパのメガネ
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「うーん……でも、ここにあったってことはとーとのじゃないのー?」

「パパのおともだちのかもしれないよー?」

「とーとのおともだち……しんらとかかなー?」

「しんら、こんなメガネしてたかなー?」


眼鏡をベタベタと触りながら話し合う双子。

今の二人にとっての興味は書くものを探す、から手に持っている眼鏡は誰のものか―――という事を考えるのが楽しく、書くものを探す、という目的は既に二人の中で消えていた。


二人が持っている眼鏡は父親―――折原臨也の友人である岸谷新羅がかけている眼鏡とは全く形が違うのだが、

それ程新羅と会わない二人は[もしかしたら新羅のかもしれない]という考えに至った。だが、昨日新羅と会ったのか―――

と聞かれたら、二人は首を振るし、父親が友人と電話をしている姿も無かった為、次は彼の天敵である平和島静雄が頭に浮かんだ。


「シズちゃん、メガネしてたかなー?」

「サングラス、って言うのしてたよね」

「サングラスとメガネはちがうよー。……うーん、やっぱりとーとのかなぁ?」

「あとでパパにきいてみようよ!もしかしたらパパのおしりあいの人のメガネかもしれないよー?」

「そっか!きのうママ、パパのおしりあいの人が来てた、って言ってたもんね!」

「うんっ」


―――――――……

数十分後 寝室

愛子視点


『臨也……朝だよ。起きて』

「……っ、……?もう、朝か」


二人が朝早くから起きているとも知らずに私は身体を伸ばしながら眠気を払いつつ、隣で幸せそうに眠る旦那である臨也に声をかけると、

まだ寝足りなさそうな目でこちらを見つめ、ノロノロと起き上がったのだが、目をしばしばとさせ、起きる気配がない。

きっと先程寝たか、寝不足で起きられない―――という事情があるのだろう、と小さく息を吐き出し、

[朝ご飯になったら呼ぶから]と言えば、理解したのかそのままもう一度横になり、布団もかけずに小さな寝息が聞こえてくる。


―――まあ、起きないだろうけどね……。


あれは完全に寝ぼけていた状態である為、私が[朝ご飯になったら]と言った所で起きた時の彼に記憶されていない事が多い。

彼は[寝ても良いのか][寝ては駄目なのか]という雰囲気や空気だけで判断している為、私の言葉なんて聞いていないのだ。

もう一度小さく息を吐き出しつつ、このままでは何もできない為、そのままの布団をかけたり、立ち上がってカーテンなどを開けて部屋を出ると下で楽しそうな声が聞こえてくる。


『あれ、二人とも早いね』

「あーっ、わすれてた!」

「ママごめんね!」


私が2階から声をかけると気付いたのか、二人が一斉にこちらを向き、階段の途中まで私の方までのぼってきて起こさなかった事に対する謝罪をしている。

起こしに来なかったな、とは思ったが、起きようと思えば自力で起きられるし、携帯のアラームもある為、

二人に起こして貰わなくてもいいのだが、双子は使命感のように毎日起こしに来てくれる。まあ、だからといって絶対起きられる、とは言えないのでかなり助かっている部分でもあるのだが。


「パパはー?」

「まだねてるのー?」

『うん、まだ寝てるよ。お仕事疲れちゃったみたいだね』


いつもの事だとは思うのだが、最近は気温の差が激しいので夜起きている時は、

上に何か羽織るか、ひざ掛けのような物があった方がいいと思うので後で用意しておこう、と思いつつ、朝ご飯を準備しようとしていると―――


「ママー?これだれのメガネー?」

「しんらのじゃないよねー?」


顔をヒョコ、っと出した二人が指紋でベタベタになった眼鏡を持って来て問いかけてきた。

黒なのだが、あまり[眼鏡をかけている]とは思わせないデザインであり、一言で言うとシンプルだった。
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