折原家2
□朝顔の観察
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「そういう事言うなら俺にだって考えがあるよ?」
「「?」」
二人と張り合う臨也はニヤリ、と嫌な笑みを浮かべたかと思えば冷蔵庫まで歩いて行き、冷凍室を開けた瞬間―――何をやろうとしたのか解ってしまった。
―――大人げないなぁ……。
だが、二人はまだ解らないのか首を傾げたまま見つめていたので助けたくなったが、私が助けようとしてるのが解るのか、[解ってるよね?]と首をこちらに向け、一言言葉を吐き出す。
『……大人げないよ、パパ』
「これぐらいしないと二人は解らないみたいだからねぇ?」
「「!!」」
その言葉と共に立ち上がり、振り返った両手には子供達が楽しみにしていたアイスが2つ握られており、[暑いし、俺が食べちゃおうかな]なんて言いながらこちらへと戻ってくる。
「パパぁっ、ダメぇ!」
「ぼくのバニラ、とっちゃダメぇっ!」
「君達が意地悪するからだろう?……それに、二人は俺に意地悪されたら怒るじゃないか。それと一緒だよ」
「パパはおとなだもんっ」
「おとなはがまんするんでしょー!」
「そんなの誰が決めたの?……一応言っておくけど法律とか憲法とかそういうのでは決まってないからね」
「ほーりつ……?」
「けんぽー?」
いつの間にか広まった[子供に譲る]というもの。
昔は食べる物がなく、親の私達が食べるよりもまだ生きられる可能性がある子供達に―――というのから始まったのかは定かではないが、
いつの間にかそれが[当たり前]になっていて、疑わなかったが、臨也のように大人げなく[意地悪されたんだから意地悪する]というのは親としてどうなのだろうか。
そんな事を考えている間にも臨也はペラペラと言葉を吐き出して[決まってないなら食べても良いよね]と笑う。
「だめぇーっ!あたしのぉー!」
「かえしてぇーっ」
袋から開けて―――食べようとする所を二人は突進するかのような勢いで走り、筑紫はテーブルの上のチョコレートのアイスを、
紫苑は父親が手に持っているアイスを奪って[あたしのっ][ぼくのっ]と猫が威嚇するように怒っている。
「……君達さ、本当に俺がアイスを2つも食べると思ってるわけ?」
「たべるっ」
「とーとたべちゃうーっ」
「…………」
小さく溜息を吐き出しつつ、問いかけると双子は一瞬の間もなく[食べる]というので臨也は苦笑するしかなく、
言葉すら出てこない―――というより、何を言っても反抗するのは解っているような感じだ。
『パパはそんな酷い人じゃないよ。ああやって言うけど、ちゃんと二人に返すつもりだったんだよ、ね?』
「本当に食べるつもりだったんだよ?外が暑いのは本当だしさ」
このまま臨也が一方的に言われ続けているのは嫌だったのでフォローしたのだが、彼は[そんな事しなくていい]と言わんばかりに外に目を向け、言葉を吐き出している。
『パパ……っ!』
「……全く。ママは本当に俺の事が好きだねぇ」
『なっ……!』
ヒラヒラと踊るように冷静で―――自分達の大事な子供に[盗んで勝手に食べる]と言われているようなものなのに、
臨也は笑って私をからかっており、フォローしているのが馬鹿らしくなる。
顔を赤くする私に臨也は[照れなくても良いじゃないか。俺と君と子供達しかいないんだから]と反対に宥められ、微妙な気持ちだ。