折原家2

□朝顔の観察
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全身で暑さを感じつつ、淵の方に置いてある二人の名前がひらがなで書かれた朝顔を見に行けば、ささった支えを使うようにツタが伸び、

クルクルと渦を巻いたかと思えば、そこから葉が出たり、朝顔が咲いたり、蕾ができてとても綺麗だ。

筑紫の方もまだまだ花が咲きそうな蕾が多く、また明日見たら咲いていてもおかしくないだろう。

紫苑の方は蕾は少ないが、芽のように小さくできているのがあり、まだまだ数日ほどかかるだろう。


二人は朝顔に水をやるのか、一度下に降りたかと思えば、臨也が[育てるなら形から入らないとね]と言って100円均一にありそうなジョウロを買ってきて二人に渡したものを使って

[おみずですよー]とニコニコ笑いながら水をあげ終わると、ついでに今日の絵日記も書いてしまうつもりなのか、宿題を広げてクレヨンで朝顔の絵を描いている。


―――二人はお互いに張り合ってるのかな……。


二人の絵日記の日記の方を見ると筑紫は―――


〔あさがおのお花がさきました。おとうとより、いっぱいあさがおがさいてくれるといいなぁ〕


と書いてあり、紫苑の日記の方には―――


〔あさがおがいーっぱいさきました。おねえちゃんよりもっといーっぱいさいたらいいな、とおもいました〕


なんて書き、それを見たのか二人で[ぼくのほうがいーっぱいだよ!]と喧嘩している姿があって、溜息を吐き出したくなる。


―――殴り合いの喧嘩になるよりはいいんだけどさ……。

―――何だかなぁ……。


お互い大怪我するような喧嘩へと発展するよりはまだまだ二人の喧嘩は可愛いものなのかもしれないが、

朝顔については喧嘩をしてもどうする事もできないし、たくさん水をあげた所でたくさん咲くわけでもないので、何とも言えない。


『ほらほら、暑いから早く中に入ってアイスでも食べよ?』

「!アイスーっ!」

「!ぼく、バニラがいいっ!」


二人の喧嘩をいつまでも見ているわけにもいかないし、そろそろ中に入りたかったので気を引けそうな言葉を吐き出せば、すぐにノートとジョウロを持って2階へと下りて行く。


「3人とも、俺を置いて行くなんて酷いじゃないか」

『パパ……。起きたの?』


2階へと下り、そしてそのまま1階へと下りて行く階段から見知った顔が見えて―――近付いて行けば、

コーヒーを片手に携帯電話を弄る臨也の姿があり、先程まで[起こしたら殺す]と言わんばかりの雰囲気はなくなっている。


「まあね。というか、1度起きた記憶がないんだけど……俺、何か言ってた?」

『……起きたら殺す、っていう雰囲気出して、[俺、二度寝するから。起こしたら許さないよ?]って』

「……記憶にないなぁ」

『それとか……[朝顔なんかの為に起こされたの?]って不機嫌になってた』

「……ないね。気付いたら君や子供達がいなかった、ってぐらいかな」


彼の顔は嘘を言っているようには見えず、殆ど寝ぼけていたのだと言うのが解る。まあもし嘘を吐いていたとしても、私や子供達にはそれを確かめる術はないのだが。


「あさがおなんか、じゃなーいっ!」

「とーと、ひどいよぉ!」

「酷い、って言われてもねぇ。俺は言った覚えがないんだからどうする事も出来ないじゃないか」

「もうパパにはあさがお、みせてあげなーいっ」

「すっごーっくきれいにさいても、とーとにはみせてあげなーいっ」


―――こういう時は双子なんだから……。


いつもは喧嘩が絶えない双子だが、誰かに意見する時や父親に対する時の態度は大体同じだ。
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