折原家2
□朝顔の観察
1ページ/13ページ
<朝顔の観察>
新宿 早朝 某マンション
愛子視点
「ん……っ、んぅ……」
『……んーーっ』
外で子供達が騒いでいる。
そんな声で私と旦那は起こされ、上半身だけを起き上がらせつつ、ボーっとしながら扉に目を向けていると―――
「ママーっ、パパーっ!あさがおっ!あさがおさいたーっ!」
「ぼくのほうがねー、1つおおいんだよー!」
扉に向かって聞いて欲しい話を叫んでいる様だ。
今何時だと思ってるんだ―――と寝ぼけた頭で考え、携帯を手に取って確認するとまだまだ寝ててもおかしくない早朝で―――いつ子供達は起きたんだ、と疑いたくなる程である。
隣でボーっとしている旦那なんて[朝顔なんかの為に起こされたの?]と凄く機嫌が悪く、起こされた事が気に入らないようだ。
―――……まあ気持ちは分からなくもないけど……。
折角いい気持ちで寝ていたのに―――自分の意志や、起きる時間の為に鳴る携帯や目覚ましならば、まだ彼は許していただろうし、[仕方ないか]と起きていただろう。
しかし、起こされたのは子供達の朝顔―――夏休みに入った時に持って帰ってきた鉢植えのようなものに入った夏休みの宿題だった。
確か子供達が言うには毎日水をあげて、それを日記のように書いて出すのが1つの宿題になっていた気がする。
小学1年生の宿題なんてあってないようなものだと思うのだが、子供達は[いーっぱいあるんだよー!]と文句のように言っていたので子供達なりに大変らしい。
「……俺、二度寝するから。起こしたら許さないよ?」
『……はいはい。ゆっくり休んでください』
いつ彼が寝たのかは解らないが、二度寝するという事はそれほど寝てないのだろう。何度言っても旦那―――折原臨也は言う事を聞いてくれないので諦めて背中をポンポン、
と叩けば、気持ち良くなったのかすぐに寝息が聞こえてきて―――[おやすみ、臨也]と触れるだけのキスを額にして部屋の外で待っている子供達の元へと向かった。
「とーとはー?」
「おかぜー?」
『パパ、お仕事で疲れてるんだって。まだ寝たい、って言ってたから静かにしようね』
「「はーいっ」」
いつもなら私が先に出てきて後から臨也が出てくるのだが、いつまで経っても父親が来ない事に疑問を感じたのだろう。
首を傾げながら扉を開けようとするので、すかさず臨也がどうして来ないのか理由を説明すれば、
解ってくれたのか大きな返事をした後[ね、ママ、ママ!]と本来の目的を話し始める。
「あさがおのおはな、さいたー!」
「きれーなんだよー!」
『そっかー。二人とも一生懸命育ててたもんね』
「「うんっ」」
持って帰って来た当初はすぐに枯らしてしまんじゃないか―――と心配になったが、二人は頑張って自分達で育てるつもりらしく、
朝早くに起きては水をあげたり、絵日記のように絵を描いて自分達の朝顔の成長を見守っていたようだ。
『ママも二人の朝顔が見たいな、って思うんだけど……見てもいい?』
「いいよー!ぼくのほうが、すっごくきれーなんだからっ」
「あたしのほうがきれーだよーっ!」
このまま臨也のように二度寝したら絶対に起きられそうにないので、二人が話してくれた朝顔を見に行こうといつも洗濯物を干す屋上へと向かった。
『あっつー……』
「あつーいっ」
「むわーってするーっ」
部屋の中が快適すぎたせいか、外の空気に触れた瞬間、額に汗が浮かんだような気がするほど暑い。
今日は曇りのち雨―――なんて言われていたので湿度で温度はそれ程なのに暑さを感じてしまうのだろう。