折原家2
□その、裏側
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―――――――……
静雄視点
「んじゃ、俺はヴァローナと合流してから社長に伝えてやっから、お前はその双子の相手をしてやれよ」
「うす、ありがとうございますトムさん」
「気にすんなって。筑紫ちゃんと紫苑君だっけ?静雄の事、頼んだぞ」
「はーいっ!」
「いってらっしゃーい!」
トムさんは二人の頭にポン、と手を置き、笑ったかと思えば俺の方にやってきて肩を叩いて[頼んだぞ]と片手を振って歩き出す。
―――ホント、トムさんには敵わねぇな。
器の大きい人だ―――と心の中で呟きつつ、トムさんが去って行った事を確認すると今度は俺が二人の頭に手を置いて[何がしたいんだ?]と問いかけた。
「うーんとねー……ゲームセンター!」
「しずおさん、ぬいぐるみとるのじょーずでしょー?だからまた、しずおさんにぬいぐるみとってほしーの!」
「UFOキャッチャーか。……仕方ねぇな、少しだけだぞ」
「「やったぁああ!」」
二人は少し悩んだようだが、一度連れて行ったゲームセンターが気に入ったようで思い出すように言葉を吐き出すので、小さく息を吐き出して二人の手を取って歩き出す。
―――俺が握ったら潰れちまいそうな小せぇ手だな。
手を握った事がない、というわけでもないが、俺が本気で力を込めたら二人の手は簡単に潰れて原型すら留めないかもしれない。
それなのに、二人は笑顔で[たのしみー!]と笑顔で俺を挟んで会話しており、[恐怖]という感情はどこにもないようだ。
―――何つーか……やっぱ、あの二人のガキだよな。
良い意味でも、悪い意味でも。
弟の紫苑はますますあのノミ蟲にそっくりになってきて―――悪意の無い天敵を見ているかのような気持ちになる。
姉の筑紫も先程会った友人―――折原愛子にそっくりになってきて、可愛らしさ、というのか女らしさと言うのか、そういうのが見えるようになってきた。
―――……ま、俺を怖がらねぇ奴は貴重だし。
―――コイツらがいつまでも俺の傍にいるっつーなら……俺は守ってやる。
―――いつまでも、な……。
「シズちゃん、いたいよー。ぎゅーってしたらぼく、いたいいたいになっちゃうよー?」
「しずおさん、どーしたのー?」
「……ああ、悪いな。考え事してた」
決心するように心の中で呟いていたのだが、いつの間にか力を込めていたらしく、
二人は抗議するように俺に向かって言葉を吐き出すので我に返り、言い訳すれば[かんがえごとー?]と聞いてきた。
「ああ。……俺を怖がらねぇ奴は貴重だし、傍にいるなら守ってやる、ってな」
「こわがるのー?シズちゃん、やさしーのにー!」
「ねー!しずおさん、あたしたちとあそんでくれるもんっ!だから、やさしーひと!」
「……お前ら。……俺は優しくも強くもねぇ。ただの……臆病者だ」
壊したくないから。
離れて欲しくないから。
だから、相手と距離を取って―――向き合わずに逃げ続けている。
この数年で俺は何とかあのノミ蟲―――折原臨也以外の奴、とまではいかないが、喧嘩を吹っ掛けてくる奴以外にキレる事はなくなったが、それでもまだ俺は怖がっている。
怖くて怖くて仕方なくて―――ふ、とした時に近くで笑顔を向けている双子に、友人に力を込めてしまったら―――そう思ったら、握り返す事ができなくて。