折原家2
□その、裏側
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[増えるもの、減るもの]の裏側の話。
基本、シズちゃんと双子がほのぼのしてるだけの、何にも面白くない展開かもしれませんが、読んでくださると嬉しいですw
<その、裏側>
新宿 某マンション
愛子視点
「じゃあ俺は、仕事があるから。夕方ぐらいには帰ってくるから大人しく待ってるんだよ?」
『はいはい、気を付けていってらっしゃい』
「パパ、いってらっしゃーい!」
「おみあげかってきてねー!」
「……解ったよ、お前達の好きな甘い物でも何か買ってくるから、ママのいう事を聞くんだよ?」
「「はーいっ!」」
何もない[日常]。
平和な日々。
旦那が玄関に立ち、妻の私や子供達が笑顔で彼を送る。そんな当たり前の[日常]が愛おしくて―――適当に返事をしながらも[怪我をせずに笑顔で帰って来られますように]と心の中で願う。
彼の仕事は常に危険を伴う為、笑顔でこの家に帰って来てくれる事だけが私の願いだ。
今回の仕事は情報を与えてくれる人間に会うだけ、と言っていたが、その人間が何をしてくるか解ったものじゃないのが旦那の危ない所だ。
―――裏切られる可能性だって0じゃない……。
本当の意味で[信頼]とは彼の仕事上ないのかもしれないが、それでも行ってみないとその真相は分からない。
大変な仕事だ―――そんな事を考えていると子供達が[ママ、じかんー]と時計を指さして教えてくれ、確認すると私もそろそろ出かけないと遅刻してしまう。
本当なら旦那―――折原臨也に言わなければならない所なのだが、友人がそれに反対し、子供達をここに置いておくわけにもいかないので一緒に池袋まで行く事になった。
「ぼくねー、とけい、よめるようになったんだよー!」
「いまのじかんはー、えーと……長いはりが1でー、みじかいはりが7!」
「えーと、えーと……1じ……うーん……」
『1時35分だよ』
最近小学校で時計を読む勉強をしているらしく、時計を見ながら[いまのじかんはー]と睨めっこしながら教えてくれる。
前は自分の名前のひらがなを書く事すら苦戦していたのにもう時計を読める歳になったのか―――と嬉しく思いつつ、自分の支度を整え、玄関から外に出る。
「まさおみたちとおやくそく、2じでしょー」
「2じになったらぼくがおしえてあげるー!」
「あたしがおしえてあげるのー!」
「ぼくー!ぼくがさいしょにいったー!」
『はいはい、じゃあ二人に教えてもらおうかな』
言葉を覚えれば、それだけ喧嘩をする内容も変わってくるわけで。
最近は[どちらが最初に言ったか]で決まるらしく、それでも認めたくない二人は[わたしがいおうとしたー!]と結局いつもの喧嘩へと発展していく。
―――二人にとっては[どちらが上]っていうのがないんだもんね……。
兄弟や姉妹ならば兄や姉、弟や妹などと決まってくるが、二人は双子であり、数分ぐらいの差しかない。なので更に[言いやすい相手]になっているのだろう。
姉である筑紫は弟である紫苑の事を弟とは思っていないし、兄とも思っていない。
更に、紫苑も筑紫の事を妹とは思っていないし、姉とも思っていない。
事実上は筑紫が姉であるのだが、それを認めたくないのが紫苑なのだろう。双子と言うのも大変だな、と思いつつ二人の手を取るとタクシーに乗り込んで池袋に向かっていく。