折原家2
□増えるもの、減るもの
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「あまり食事を抜く、っていうのは感心しないよ?食事は一日のエネルギーになるんだから」
『うん、分かってはいるんだけど……。その、えーと……』
彼に自分が太った事を伝えようか迷った。
もしその話をして、太った自分を彼は愛してくれるだろうか。
人間が好き、なんて言っているので特に人間の体重について気にしていないのかもしれないが、
それでも一緒に歩いている時に[あのおばさん、すげー太ってる]なんて言われたら怖くて臨也と一緒に歩けない。
―――痩せるまで言わない方がいいのかな……。
―――でも、臨也に隠し事なんてできるとは思わないし……。
隠し事をした事はある。
だが、すぐに臨也にバレて白状した記憶があるのであまり隠し事はしないようにしているのだが、
女にとって体重というのはかなり重要な部類に入り、他人に対して[何キロ?]なんて気安く聞けるものじゃない。
歳だってそうだが、そういうのは若い時に言うもので、歳を取れば隠したくなるのは女のサガなのかもしれない。
「……まあいいけどさ、無理をして身体を壊したら何の意味も無い事は……解ってるよね?」
『う、うん……』
「それならいいんだ。それに俺も、あまり君に説教をできる立場じゃないからね」
『臨也はもっと……ご飯を食べるべきだよ。前も体重減ったとか言ってたし……』
彼の言葉には私が何を隠しているのか解っている―――と言わんばかりで、ギク、としたが、臨也は笑顔のまま言葉を続け、それに便乗するかのように言う。
「そうだねぇ。まあ体調の変化もあるみたいだし……最近はきちんと食べるようにはしてるから元には戻って来てるよ」
『そっか、良かった……』
「君もきちんと食べなよ?ここ数日、一緒にプリンを食べてくれなくて子供達、悲しがっていたよ」
『……だって……っ、だって……!』
私だって一緒に食後のデザートを食べたい。
臨也が私達家族の為に買ってきてくれる甘い物は、密かな楽しみになっているのだ。
彼はあまり甘い物が好きではないらしいが、子供達が[おいしーっ]と笑顔で言う為、思わず買ってきてしまうらしい。
もし私が臨也の立場だったら―――多分、毎日のように甘い物を買ってきて[美味しい?]と聞いているかもしれないが、ここは彼だ。
きちんと体重などを気にして数日に一回、二回などと回数を決めている。ここ数日はもらい物があったらしく、連続で甘い物が続いていたが。
「……そうやって食事を減らす、って事はダイエットでもしてるんだろう?やめなよ、そういうダイエットが一番身体に負担をかけるんだから」
『そうだけど……。何やっても体重減らないし……それなら後はご飯を少なくするぐらいかな、って思って……』
「単純だねぇ、君は。食事制限すれば、確かに数日もしないうちに体重は減るだろうね。けど……それは筋肉を減らしているだけで脂肪を減らしてるわけじゃないんだよ。
……俺も手伝うから、外で歩いてきた方がよっぽど健康的だよ」
『……いいの?』
まさか臨也がダイエットを手伝ってくれるとは思わなかった。
意外な彼の言葉に驚いていると臨也は[俺が否定すると思った?]と挑発するように問いかけてきた。
『だって……臨也ならダイエットなんてやめろ、とか言いそうじゃん』
「じゃあ俺が君に止めろ、って言えば君は止めるのかい?」
『それは……その……』
太ったままなんて嫌だ。
この言い方ならば、臨也は私が太った事にあまり関心がないようなので不安はないのだが、次は周りの目が気になってしまうのだ。