折原家2

□増えるもの、減るもの
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ダイエットしたいなぁ、という自分の中の考えが小説になりました。

<増えるもの、減るもの>


新宿 夜 某マンション

愛子視点


「ママーでたー!」

「パパねー、じょーずにあらってくれたんだよー」

『そっかー、良かったね』


いつものように二人は自分達がお風呂から出た事を知らせ、そして父親がどのようにして自分達を綺麗にしてくれたのか、

そして上手だったのかを事細かく教えてくれ、まるでお風呂を入れるのを評価しているかのようだ。


―――臨也も大変だなぁ……。


「ママも早くお風呂に入っておいでよ」

『うん、そうするよ』


そんな事を知ってか知らずか、父親―――折原臨也は髪の毛をタオルで拭きながらこちらまでやってきて子供達と一緒に買ってきたプリンを食べるようだ。


「とーとー、シズちゃんねー、プリンすきーっていってた!だからこんど、シズちゃんにプリン、かってもいー?」

「いっぱいいっぱいしずおさんにプレゼントしたいの!」

「……何でシズちゃんなんかに」

「だってぇー、シズちゃんゲームセンターとかー、ハンバーガーとかーつれてってくれるんだよー?」

「ハンバーガー、おいしかった!」

「…………」


そんなプリンを見て、二人は思い出したかのように彼の天敵の名前を出し、臨也のお金で相手―――平和島静雄さんにプレゼントをしたい、というのだ。

あまり臨也と静雄さんが仲が悪い、というか命がけの戦争になる事を知らない二人は、平気で静雄さんの名前を出すし、

何で臨也と彼が喧嘩しているのか解らないように[けんかしちゃ、だめだよ!]と言う。


そして、時々祝日などに小学校が休みの日に臨也が仕事に行き、私が用事がある時に一緒に池袋に行くのだが、大体静雄さんが[俺が見てやるから]と名乗りを上げてくれる。

なのでそれに甘え、私は存分に夕方になるまで遊べるのだが―――二人はいつの間にか色々な所に遊びに連れて行ってもらっている様だ。


前に聞いたのは、突然雨が降って来たのでファーストフード店に雨宿りの為に中に入った時に、

双子が見た事のない食べ物に興味を持ってしまったので、ハンバーガーを1つずつ買ってくれたそうだ。

お金を払う、と言ったのだが、静雄さんは[俺も楽しかったから金はいらねぇよ]と言ってくれて―――本当に怒らなければ良い人だな、と思った。

だが、父親の臨也からしてみれば天敵と楽しく遊んでいる二人が気に喰わないようで無言でこちらを見つめ、[何でシズちゃんなわけ?]と問いかけてくるかのような目つきだ。


『そう言われても……池袋に行くと確実に静雄さんに会うから……。だからついでに、って感じで……』

「ついで、って……。君が見てればいいじゃないか」

『私だって、静雄さんとか他の人の用事がある時は頼まないよ?でも……遊んでくれる、って言うからお言葉に甘えて、ってなるじゃん……!』


喧嘩になりそうな言い合い。

私だって静雄さんだから、というわけじゃないし、できれば一緒に居た方が楽なのだが、安全面から考えれば彼と一緒に居た方がいいわけで。

それに、迷子になってしまっても静雄さんなら必死で探してくれるのは長くなる付き合いで解って来た事だ。


「ぼく、シズちゃんとあそぶのすきー!とーと、ぜんぜんおそと、つれてってくれないしー」

「ねー。だから、しずおさんといっしょにおでかけするの!」

「解った解った。今度、どこにでも遊びに連れてってあげるからシズちゃんとだけは遊んじゃダメ、解った?」

「やーだっ」

「やだー!しずおさんとあそぶもーんっ!こんど、くまさんのぬいぐるみ、とってくれるってやくそくしたもん!」」

「前は聞き訳の良い子供だったのにねぇ」


ぷい、と顔を背ける双子に臨也は大きく溜息を吐き出し、プリンを人掬いし、[やっぱり甘い]と独り言のように呟く。
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