折原家2
□眠れない日は
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―――岸谷さんに連絡した方がいいのかな……。
―――でも……。……迷ってても仕方ないよね!臨也の危機なんだもん。
色々な事が頭を過るが、考えてても仕方ない―――という答えに到り、とりあえず彼が残したご飯にラップをかけて冷蔵庫にしまい、体温計や毛布を持って、
マスクをした方が移りにくいだろう―――という無駄かもしれない足掻きをする為に一度毛布と体温計を置いて何のために買ったのか思い出せないマスクを1枚取り出し、
口を覆うと、よし、と意気込んで毛布を持って階段を上がろうとして体温計を持って行くのを忘れた事に気付き、一度下りて全部確認してから彼が寝ている部屋へと向かう。
『臨也?……寝てるかな……』
「愛子……」
『あ……別に寝てていいのに。睡眠が一番の薬だよ?』
「……熱くて、寒くて……身体中の、関節が痛くて、眠れないんだよね……」
もしかしたら寝ているかもしれない―――と思ったのだが、彼は扉が開いた音に気付いたらしく、こちらに目線を向けつつ横になって私を呼んでいる。
ゆっくり休めば熱なんてすぐに下がってしまう―――とは思ったのだが、私が思った以上に臨也の体調は良くないらしく、
体温が上がり続けているのか、顔は見た事が無いぐらい真っ赤に染まっていた。
それに呼吸もとても苦しそうであり、ぜー、ぜーと息を吐き出しつつ、身体は小さく震えている。
楽観的に風邪だと思っていたが、もしかしたらインフルエンザかもしれない―――という考えが頭を過った。
この時期は風邪もそうだが、インフルエンザも流行る季節であり、子供達の組も何人かの子がインフルエンザになり、
双子も何日か前にやっと治って保育園に行けるようになったばかりであった。
もしかしたらその時のインフルエンザが臨也に移ったのかもしれない―――そう考えると日にちも合っているし、発症するならばこのぐらいだろう。
―――インフルエンザ……やっぱり移っちゃったかなぁ……。
風邪の時の臨也の姿も見ているのでその時の事を思い出せば、確かに今の体調が全く違う事が解る。
今の体調を例えるならば、崖っぷちに立たされているようであり、臨也が[死にそう]と言えば、本当に死んでしまいそうな勢いだ。だが、風邪の時はもっと余裕があった。
なので、[インフルエンザ]という病名も頭に入れつつ、毛布を被せ、熱を測れば―――彼が寝込むには十分すぎる程の高熱であり、
これは本格的に[インフルエンザ]かもしれない、そう思った。それに朝は元気だったのにお昼になって急に体調が悪くなったみたいなのでそこもインフルエンザ、という病気に似ている。
もしかしたら朝から僅かな体調の変化があったのかもしれないが、そこまでは臨也の身体ではないので解らないが。
『痛いの?……やっぱりインフルエンザかなぁ』
「インフル?……ああ、そうかもしれないねぇ」
『そうかもしれない、じゃない。……氷枕と冷えピタと水、持ってくるよ。水分補給はきちんとしなきゃ』
関節も痛い、と訴えているので高熱のせいかもしれないし、インフルエンザのせいなのかもしれない。
それは分からないが、とりあえず岸谷さんを呼ぼうと彼の携帯電話を拝借し、ついでに持ってくる、と言った物を用意する為にもう一度下に降りた。
『……あ、もしもし。愛子です』
[ああ、愛子ちゃんか。どうしたの?セルティに用事ならメールで伝えた方がいいじゃない?それともセルティに言えない事?]
『いや……今日はセルティさんじゃなくて岸谷さんに用があって……』
[僕に?僕に用事なんてあまり考えたくないなぁ。……臨也の携帯だし]
『すみません。……多分、岸谷さんが考えてる事は当たってると思います』
[……だろうね。それで?臨也は何をしたの?また静雄にでもやられた?それとも恨みがある人間がアイツを刺したとか?]
『違います。……えーと、臨也、インフルエンザかもしれないんです……』
[臨也がインフル!?あの臨也が!?セルティー、臨也がインフルだって!……え?インフルって何だ?って……物凄く重い風邪みたいなものだよ]
電話に出ないかもしれない、とは思ったのだが岸谷さんは面倒そうにしながらも電話に出てくれて―――色々と察してしまったようだ。
だが、今回は怪我の方ではなく病気の方だと、そしてもしかしたらインフルエンザかもしれない―――
と伝えると物凄く驚いた声を発し、記念のように恋人に伝えるとそちらの方で会話が続いているようだ。