アンケート
□強くなった二人
1ページ/17ページ
リクエスト
双子達が中3くらいになった話で楽影ジムの大会ですっかり強くなった双子達が活躍し、我が子の成長に喜ぶ臨也とヒロインちゃんの話見たいです!
<強くなった二人>
新宿 某マンション
愛子視点
「母さん、父さん、行ってくるね」
「いってきまーすっ!」
「ああ、気を付けて行ってくるんだよ」
『いってらっしゃい』
歳を重ねれば、小さかった子供達も大きくなっていく。
きゃっきゃっ、と私達の元で笑う子供達はいつの間にか友達と楽しそうに遊んでいるようで、遅くはならないが、友達とこういう遊びをした、と話してくれる事がある。
それでも、そろそろ受験を真剣に考えなければならない時期なので、最近では勉強会という名のおしゃべりで終わるようだが。
―――そのうち……話してくれなくなるのかな。
保育園の時や小学生の時は事細かく、この子とこんな事があった、この子と喧嘩した、この子に好きだと言われた、
などなど教えてくれたのだが、最近では旦那や私に聞かれたから教える、もしくは気が向いたら話す、というぐらいの頻度で―――そういうものなのかな、と思う。
それでも旦那は―――
「年を取れば言いたくない事だって増えるんじゃないかな。俺も海外にいる両親に事細かく学校でこんな事があった、なんて話さなかったよ。
いいんじゃない?思春期は素晴らしい人間の歴史だよねぇ。あの子と手が触れた、あの子と仲良くなりたい、実に人間らしい欲望だと俺は思うよ。
あの子達も人間らしく、欲望に忠実に、貪欲に異性と交友を深めればいいんじゃないかな。あ、でも他の奴らには渡さないけどね」
と楽しんでいるようで、特に話さなくなった事に対して深くは考えていないようだ。それでも私はそんな経験が無い為、[そういうものなのかな]と納得できないでいるが。
それでも二人が必ず教えてくれる事がある。それが小さい時に[つよくなりたい]と言い出し、通い始めた写楽ジムの事であり、
今日はこんな稽古をした、師匠にこんな事を教えてもらった、など楽しそうに話してくれるのだ。今はそれだけが私にとって子供達と繋がっていられる糸のような物だった。
―――頭では分かってるんだけど……やっぱり寂しいんだよね。
大きくなれば、そういう事もあるだろう―――というのは旦那である折原臨也から聞いた事だし、友人である狩沢さんからも聞いた事だ。
狩沢さんなんて弟に無視された、など私だったら絶対耐えられないような経験をしている為、臨也とはまた違う意味で尊敬している。
「君、まだ悩んでいるのかい?」
『悩んでる、っていうか……そうなるのかなぁ』
あの子達が出掛けた後、私はソファに腰掛け、ふう、と息を吐き出していると臨也が近付いてきて、隣に座るとそう問いかけてきた。
「……いつまでも子供のままじゃダメだって思ったんじゃないかな。アイツらは甘えん坊で泣き虫で……頑固で我儘で……双子らしいけど双子らしくない……そうだろう?」
『……臨也はさ、人間らしいよね、って言って笑ってればいいかもしれないけど……
私はそういう経験がないのっ、両親に話したくないとか、子供のままじゃダメだとか思った事ないし……』
拗ねるつもりも、自分の過去を悲観するつもりもないが、やはり[経験の差]というものがこういう所で出てきてしまうと思う。
臨也は海外にだが、両親が居て―――電話をすれば時間があれば話を聞いてくれるだろうし、心配もしてくれるだろう。
子供達の年齢の時、臨也が何を思い、どう両親と付き合ってきたのか―――そういう経験があるからこそ、[自分も経験してきた事だから]と思う事ができる。