アンケート

□来ちゃったっ
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『いってらっしゃい、臨也』


―――――――……

数時間後

愛子視点


―――うーん……とりあえず大体終わらせたし、どうしようかな……。


臨也や子供達が出掛けて数時間。

私一人で食べるご飯は何だか味気なかったが、何だかんだで連絡をくれる友人達や臨也のおかげで寂しくなくて―――

そうこうしている間に家事も大体終わらせてしまったので、友人の一人である狩沢さんから借りた本を読もうか、それとも、新しく買った本でも読もうか、なんて考えていると―――


『?……誰だろう……』


外のエントランスからこの部屋に用事でもある、と言わんばかりにチャイムが鳴り、僅かな不安と疑問を浮かべながらそちらへと向かう。

臨也の仕事相手ならばあまり応対しない方がいいかもしれないが、宅配便が来たのかもしれないので念の為確認しなければならないのだ。

彼は時々宅配業者を使って色々買っているらしく、少し前にも荷物を受け取る姿を見た。臨也から―――


――「宅配業者の人が来たら受け取ってもらえると助かるよ。不在届を出されると色々と面倒だしさ」


と言われている為、ドキドキしながら覗けば―――私の知っている顔が3つもあり、一人は人間と言っていいのか解らないが、

私にとっては[過去を理解してくれている人物]の一人なので見た瞬間、先程の不安が吹き飛んでしまった。


『岸谷さん、セルティさん……それに、静雄さんまで!どうしたんですか?』

{いやー、中々会おうと思って会えないしさ、それならいっその事会いに行っちゃえばいいかなって思ってさ!}

{<悪いな、こんな時間に。もしかして……臨也は居たりするのか?>}

{悪ぃな、愛子。新羅の奴が久しぶりにお前に会いたい、とか言い出しやがってよ……}

{静雄だって愛子ちゃんに会いたい、とか言ってたじゃないか!僕―――}

{黙れ。恥ずかしい事サラッと言うんじゃねぇ}


―――何て言うか……エントランスの前でそんなに騒がないでほしいんだけどなぁ。


一応ここは新宿だが、一度セルティさんの首の方だが写真などで有名になったわけだし、その隣には白衣を着た男とバーテン服を着た男が言い争う、というか騒いでいる為、とても目立つ。

しかも、金髪にバーテン服なんて池袋では有名だし、池袋以上ではないが、それなりの知名度だってあるのだからエントランスで騒いでいられると後で臨也に見つかった時が怖いのだ。


―――静雄さんが来た、なんて知られたら何て言われるか想像するのだって怖いのに……。


『静雄さん、それ以上やると死人が出て、子供達が学校の噂になっちゃう』

{……悪ぃ。新羅の奴が変な事言うからよ}


岸谷さんの首を絞めていた静雄さんだったが、首を絞められている彼の顔色が変色していくのがこちらからでも分かる。

セルティさんの慌てている姿や私の言葉を聞いてその手を離せば、げほげほと咳き込む岸谷さんとPDAで文字を打つのも惜しいぐらいに色々な所を確認している彼女の姿があった。


{セルティも悪いな。……俺だってあんま力入れねぇようにしてんだけどよ……}

{<だだだだだ大zy丈夫だ、静雄。新羅はペラペラと話しすぎなんだ>}

{セルティが心配してくれて僕は嬉しいよ!……後半の言葉が気になるけど、気にしないよ!何て言ったって、僕は―――}

{<だから喋り過ぎだっ!>}

{むごっ……うぐごがががっ}


―――可哀想……。


やっと解放されたかと思えば、次はセルティさんの影によって頭全部を包められ、あの状態ならば息もできないだろう。

だが、セルティさんは気付いていないようでこちらを向き直ると[中に入れてもらってもいいか?]とPDAに文字を打ちこむ為、了承し、エントランスの扉を開けた。


―――いいのか解らないけど……一人で子供達が帰ってくるまで待つのは嫌だし……。


結局の理由はそれなのだ。

臨也と一緒で寂しくて、この寂しさを紛らわせたくて―――折角来てくれた3人を[臨也が帰ってくるから]とか[臨也が駄目って言ったから]なんて理由を使いたくない。
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