アンケート
□頼りになるあの人?
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「死ねぇええええ!臨也ぁあああああ!」
「!」
迫ってくる、迫ってくる。
石よりも堅い、彼の頭が。自分めがけて襲いかかろうとしている。
逃げようと足を器用に動かすが、相手の脚力の方が一歩上手か、一瞬のうちに間合いを詰められ―――そして物凄い音をしながら両者は倒れた。
―――――――……
数分後 新宿某マンション
愛子視点
『パパ、遅いねー』
「おそーいっ」
「おしごとかなー?」
いつもならお昼には帰ってくる筈なのだが、何の連絡もなくて―――4人でご飯、というのが旦那が決めた家のルールみたいなものなので3人でお預けを食らっている状態だ。
早く食べたくて仕方ないのか、二人は[たべちゃだめー?]とこちらに向かって問いかけてくるので[もう少しだけ待とうね]と言えば、頬を膨らませつつも肯定する双子。
―――どうしちゃったんだろう……。
―――怪我とか、してないといいんだけど……。
いつも遅くなる時は[先に食べてて]と連絡があり、それを見てから3人でご飯―――となるのだが、こう連絡が無いと心配にもなるし、お腹も空く。
私も早くご飯が食べたい、と考えているとピンポーン、とチャイムが鳴り、誰だろうと思いつつ鍵を開け、扉を開くとそこには―――
「ただいま」
彼の天敵が笑顔で立っており、[ただいま]と言った。
ここは私や旦那、そして双子の子供達が住んでいる家であり、決して友人が帰ってくる家ではない筈だ。
『!?……え、あ、あの……静雄、さん?どうしたの?』
「は?何言ってるの?ついに目まで悪くなっちゃったわけ?」
驚きで固まる私。
だが、相手―――平和島静雄さんはいつも通りとばかりに玄関で靴を脱ぎ、中に入ろうとしており、私の言葉が信じられないようだ。
いつまでもリビングであり、事務所として使っている部屋まで来ない両親を心配してか、[パパーママー、ごはんーっ]と言いながら二人がたたた、と走ってこちらにやってきて―――
「シズちゃんだー!」
「しずおさん、あそびにきてくれたのー!?」
「……。どういう事?」
そして、素直な言葉で驚いている様だ。
私や二人に[静雄さん][シズちゃん]と言われて理解していないのか、色々な場所を触るようにして―――そして気付いた。
「どうなってるの、これ……。俺が、シズちゃんになってるってさ、笑えない冗談だよ」
『……もしかして、パパ?』
「もしかしても何も、君の旦那は俺しかいないだろう?」
「パパが、しずおさんになっちゃったぁああ!」
「すごいすごーいっ!とーと、シズちゃんになっちゃったぁああ!」
頭を抱え、どうしてこの状況になったのか彼の頭でもついていけてないのか混乱しているらしい。
その状態を見て、静雄さんが私達を驚かせる為に吐いた嘘ではないと気付き、問いかけるときっ、と睨みつけられて自分の正体について明かした。
それを聞いた双子は大興奮しながら静雄さんの身体をした旦那―――折原臨也に抱き着いて[だっこしてー!]と甘えている。
「……抱っこするのはいいんだけど、あんな力出ないよね?」
『……分からないね。一回お皿を持ってみれば?』
静雄さんには力がある。
道路標識なんて、バイクなんて、自動販売機だって彼の手に掛かれば何でも持ち上げてしまうし、何でも壊してしまう。
そんな状態のまま息子―――折原紫苑を抱っこして大怪我をさせたりしたら憎むに憎めない。