アンケート
□記憶のカケラ
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リクエスト
愛子ちゃんが何らかの事故で記憶喪失になってしまう
前々回の[突然の瞬間]の続きのような話です。読まなくても解るようには書くつもりですが、読んだ方が解り易いかも?
<記憶のカケラ>
池袋 数十分前 某マンション
愛子視点
『ん……っ』
ここはどこだろう。
見た事も無い部屋で私は目が覚めて―――見た事も無い子供達と男の人が心配そうな顔でこちらを見ていた。
「ママっ!」
「ママ、だいじょーぶー?」
「あ、気が付いたみたいだね。大丈夫かい?」
『…………?』
―――誰だろう……。
一度に私の方に顔を向け、思い思いの顔で声をかけてきて―――何て答えればいいのか解らなかった。知り合いなのかもしれないが、どうにも思い出す事ができなくて、
申し訳ない気持ちになるが、思い出そうとすると鈍痛が襲ってきて―――どうしてこんなにも思い出す事を否定しているのかすら解らない。
―――解らない……。
「あ、えーと……僕達の事、解る、よね?」
『…………』
「ママー?」
「ママ、ぼくのこと、わすれちゃったの?」
私が何も答えないでいると男の人は困ったような顔でこちらを見つめ、下の方でこちらを見つめている子供達は泣きそうな表情だ。
―――……心が、痛い……。
どうしてこんなにも心が痛いんだろうか。
どうして知らない筈の子供達が泣きそうな顔をすると抱きしめたい、謝りたい―――そう思ってしまうのだろうか。
「……とりあえず、何があったのかは静雄から聞いたんだけど……。あ、筑紫ちゃんと紫苑君はリビングの方で遊んでてくれるかな」
「やだっ!とーと、いっぱいいっぱいおけがしてたっ!いたいいたい、って!とーと、しんじゃうの!?……っ、やだよぉおおお!」
「ママ、あたしのことわからないーって、パパおけがしてた……紫苑だけなんてやだぁぁああっ!」
「……。解ったよ、ごめん。いいにくい話だったからあまり言いたくなかったんだ。でも……そうだね。君達には父親と母親が必要なんだよね」
男の人の言葉に二人は大泣きしながら私に抱きついてきて―――どうすればいいのか解らなかった。
きっと二人は自分の娘と息子なのだろう。何となくそんな気がする。しかし、誰と私の子供なのか解らないし、[自分が母親]という実感がないので抱きしめる事ができないのだ。
―――こんなにも泣いてるのに……。
―――私は何も思い出せない……。
「……それじゃあ言うけど、愛子ちゃん。君、あの男達に襲われたね?」
『え、あの……愛子?あの男達?』
「……。愛子は君の名前だよ。……あの事について、あまり思い出したくないようだね。
脳がそれを拒絶してる。一部なら消えてもいいのかもしれないけど……子供達の対応を見ると……僕達の記憶すら消えてるみたいだね」
『……すみません』
男の人が何を言いたいのか解らなくて―――問いかけただけのつもりだったのだが、
相手は淡々と私が置かれている状況について話をし、[臨也が聞いたら怒りだしそうだ]と溜息を吐き出している。
『あの……イザヤって、誰ですか?』
「!臨也の事すら忘れてるなんて!驚天動地に相違ないよ!……まあ子供達の事すら忘れてるようだし、アイツの事を忘れててもおかしくないけどね」
『……すみません』
男の人は[イザヤ]という人間について話をしていたのでどういう人間なのか、私とはどういう関係なのか気になり、問いかけると物凄く驚いた表情をしながら言葉を綴っていた。