アンケート
□高い所
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リクエスト
臨也さんと主人公ちゃんがサンシャイン60の展望台に行く
<高い所>
新宿 昼 某マンション内
愛子視点
「ねえ、愛子」
旦那が呼んでいる。
いつものようにパソコンデスクに座り、何かの作業なのか、
それともセットンさん達とチャットをしていたのかは解らないが、それが一旦区切りがついたのかクルリ、と椅子を回して私の名前を呼んだ。
『?』
「今日さ、暇だよね。いや、暇にしか見えないし、子供達も保育園だからやる事ないよね」
『…………』
確かにこの時間は大体の事を終わらせて、のんびりとしている事が多いのだが―――ここまでハッキリと[暇だよね]と言われると反抗したくなる。
『あ、そうだ。私、紀田君達と―――』
「暇だよね?」
『…………』
有無を言わせぬ言葉。
最初から私の予定なんて解っているのだから[今日出掛けよう]と言えばいいのに、敢えて遠回りして[暇だよね]というのだから面倒臭い。
―――本当に臨也は……。
小さく溜息を吐く。
これが秘書である女―――矢霧波江さんならば小言の一つや二つ、言われてもおかしくないのだが、生憎波江さんは旦那の仕事の用事という事でここには居ない。
波江さんのように小言を言えれば楽なのだが、私にはそんな事を言えないのは自分でも解っている為、[どこかに行くの?]と聞けば、嬉しそうな旦那の顔。
―――言い当てて欲しかったのね……。
「うん、久しぶりのデートに行こうよ」
『結構頻繁に出掛けてると思うんだけど……』
「そう?俺としてはもっともっともっと、愛子とどこかに出掛けたいな、って思ってるんだけどなぁ」
『じゃあ……今度、温泉旅行に行きたい』
昨日のテレビを見て―――とは言わないが、いつかは家族4人で旅行に行ってみたい。温泉ならばのんびりできるし、旦那―――折原臨也にとっても悪くないと思う。
そう思い、言葉を吐き出すと臨也は嬉しそうに口元を釣り上げて[そうだね、行こうか]と呟いた。
「温泉は混浴じゃないとね」
『は!?え、ちょっと……混浴って!』
「いいじゃないか、夫婦なんだし。何も困る事はないだろう?」
そのままデートの話になるかと思えば、臨也は立ち上がって私の前に来ると手を取って爆弾を投下した。
驚き、固まる私。ニコニコしつつ、手を掴んだまま言葉を紡ぎ続ける臨也。
『そ、そうだけど……!一緒にお風呂なんて……そんな……』
「そういえば君と一緒にお風呂に入るなんて無かったんじゃない?いい機会だしさ。一緒に入ろうよ、きっと気持ちがいいよ」
『……っ、……考えておく』
[温泉旅行に行きたい]なんて言わなければ良かった―――と僅かに後悔した。
臨也は変な所で律儀だし、約束だって忘れているかと思えば、突然思い出したように果たす事だってある。