アンケート

□我儘な双子
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「本気だよ。どんな事でもいい。今日一日仕事を休め、っていうのなら休んだっていい」

「ほんとー?」

「パパ、おしごとおやすみー?」


解っていないような解ったような複雑な表情を浮かべ、とりあえず[パパは今日、お仕事がお休み]という事だけが理解できたようだ。

そういう意味ではないのだが―――と思ったが、二人が理解するには臨也の言葉は難しいような気がしたので[そうだよ]と肯定する。


「やったぁーっ!とーと!かくれんぼ!かくれんぼやろー!」

「あたしもやるー!」

「かくれんぼか……いいよ、やろうか」


[何でもする]と言ったからには臨也は今日、とことん双子に付き合うつもりなのだろう。

二人が[かくれんぼがやりたい]と言うので彼は軽い柔軟体操をすると[俺が鬼やるね]と言って目を瞑って数を数えだした。

二人は[パパはやーいー]と怒っていたが、それも一瞬の事であり、慌てて隠れ始める。

いつもの隠れ場所ではすぐに見つかるよ、と思いつつ、そんな二人が可愛いので微笑ましく見守る事にした。


―――……やっぱりそこなんだ……。


臨也が数を数えている間、私は二人が隠れようとしている所を発見し、大きな溜息を吐き出す。

筑紫は自信満々、と言う顔でソファの後ろに身体が出ないように隠れ、紫苑は台所に入っていき、こちらも同じような表情で見つけられないもん―――と思っているようだ。


『筑紫、紫苑……あっちに隠れたらパパ、見つけられないよ』

「ほんとー!?かくれるー!」

「ぼくもー!」

『声が大きい……!しーっ』

「「しーっ」」


すぐに終わるかくれんぼなんてつまらないので私は二人に声を掛けると、

大きな声で両手を上げて喜ぶので慌てて人差し指を口元へ持って行き、静かにするように言うと双子も同じような動作でコソコソと隠れていく。


「ママ、口出しちゃ駄目だよ」

『だって……ね』

「そこが面白いんだろ。……さて、どこに隠れたかな」


やはり、と言うべきか数を数え終わった臨也は私の元へ最初にやってきて注意するような言葉を吐き出すので、口籠るように言うと彼はニヤリ、と口元を釣り上げてぐるり、と周りを見渡す。


―――解りきってるし……。


何度もやってきているかくれんぼ。

二人は何が気に入っているのか、必ずと言っていい程かくれんぼをやりたがるので毎日の恒例になりつつある。

臨也が忙しい時は私と、私が忙しい時は臨也と―――二人が忙しい時は双子だけで遊んでいるのだ。

その時の勝敗は殆ど決まらないようで[筑紫みつからなかったー]とガッカリとした表情で私に報告してくるので、あの場所は[二人にとって]気付かれない場所のようだ。


「君が助言した事はあるね」

『でしょー』


臨也は念の為なのか、ソファの裏と台所の裏を探すが見つからないので私に向かって愚痴なのか、感心しているのか判別がつかない言葉を吐き出し、キョロキョロともう一度見渡した。

しかし、二人はきちんと隠れているようで、部屋の中はしん、と静まり返り、臨也は[意外だな]と今度こそ感心した言葉を吐き出す。


「もっと見つけてくれ、ってアピールしてくるかと思ったんだけど……今回は君が力を貸してるからなのかな。……でも、まだ俺には敵わないようだねぇ」

「「あ」」


すたすた、と真っ直ぐに歩いて行く臨也。

そして―――1人ずつ隠ればいいのに二人は一緒になって収納スペースに隠れていた為、扉を開けた瞬間、

二人の間抜けな顔と臨也のニコリという顔が重なり合い、[みーつけた]という言葉と共に二人を抱きしめた。
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