アンケート
□天敵の話
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リクエスト
シズちゃんに双子ちゃんの子守りをして欲しいですw
<天敵の話>
新宿 朝 某マンション
愛子視点
『…………』
「……そんな顔で俺を見ないでよ。照れちゃうじゃないか」
『褒めてるわけでもないし、照れる所じゃないよね!?私は呆れてるのっ!』
目の前で寝ている彼―――折原臨也に私は精一杯の罵りを籠めた目で見つめるが、臨也には全く効果はなく、ニコニコと笑っている。
しかし、頬の赤みは断じて照れているわけではなく―――昨日、天敵である男との喧嘩で彼は無様にも川に落ち、今日になってこのザマだ。
もう溜息しか出す事ができず、精一杯声を張り上げ、大きな大きな―――とても大きな溜息を吐き出した。
「そんな大きな声で言わないでよ。頭に響く……」
『何十回でも言いますよっ!馬鹿なの!?本っ当に臨也の頭の中はお花畑なのっ!?』
「……悪かったって。……いや、俺だって注意してたんだよ?だけどまさかシズちゃんが、そんな事を狙ってるとは思わないだろ。
頭が筋肉でできてる奴だよ?川に落とす、なんて……いや、獣なら一番最初に考える事なのか?」
『静雄さんを罵る前に、臨也はまず自分の不甲斐なさを罵りなさい!』
ぶつぶつと呟いている臨也に大きな声でそう言うと彼は[だから、頭に響くんだって……]と相当大きな声にダメージを受けたようだ。
―――いい気味っ!
もしこれが私の為、子供達の為―――仕事をし、無理を重ねた結果ならば私だってここまで彼を罵ったり、軽蔑の目を向けたりはしない。
しかし、やらなくていい喧嘩、やらなくていい戦争にも似た殺し合い。それが原因で風邪を引いた、となれば庇う余地も無く、[自業自得]その一言で片付けられるのだ。
『私は今日、紀田君達と用事があるから子供達も連れてくね』
「え、ちょ……俺の看病は誰がやってくれるの?妻である愛子の仕事だろう?その仕事を放棄して遊びに行くなんて……駄目だよ、認めない」
『はいはい。病人の為に優しい優しい私が、水と薬置いておくから後は自分でやってください』
容赦なく彼の言葉を斬り捨てる私。
いつもは[仕方ないな]と言って諦めたり、認めたりするのだが、今回の場合はその一言で認める事も、諦める事もしたくない。
[駄目]―――その言葉が通じないと解ると彼は、先程までの元気が嘘のように[辛いので、助けて下さい]と言わんばかりの表情で咳を繰り返している。
『……。……自業自得でしょ?』
「…………」
拗ねているのか布団で顔を隠し、何も言わない彼。
ここまで来ると可哀そうになってきて―――それでも、間抜けな事をやったのは臨也自身なので[すぐ帰ってくるから]と一言だけ告げて、扉の方へ歩いて行く。
「……早く、帰って来てね。いってらっしゃい」
―――――――……
池袋某所
愛子視点
「とーと、おかぜだいじょーぶー?」
「かんびょーするー!」
紀田君達との待ち合わせ場所に行く間、子供達は父親が心配なのか、同じ事を聞いてくるので扉を閉めた時に聞こえてきた彼の声が思い浮かんでしまい、口を閉ざす。