折原家

□俺、臨也
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『……。臨也』

「?どうしたんだい?」

『……臨也から電話があったんだけど』

「は?……君は自分で何を言っているのか理解してる?俺から電話?俺は今愛子の目の前に……ああ、そういう事か」


すぐに彼を呼ぶと不思議そうな表情から呆れた表情に、そして納得したような顔になっていき、やはり知っていたな―――そう思った。


『あれ何?……似せるつもりないでしょ』

「君から見た折原臨也、っていう人間と他人から見た折原臨也っていう人間が必ずしも同じとは限らないだろう?」

『……そうだけど』

「何て言われたの?痴漢をやったとか、万引きとかストーカーとか……それが今[折原臨也]っていう人間がやってきた罪なんだけど……」

『はぁ!?万引き!?痴漢!?』

「うん。今[折原臨也]はかなり色々な罪に手を染めてるみたいなんだよねぇ」


他人事みたいに―――何でもない、と言わんばかりの彼に怒るように言うのだが、彼はニコニコと笑いながら[折原臨也]がやった罪について語り、[万引きねぇ]と面白そうに笑っている。


『そんなの放っておいていいの!?臨也が……そんな、何もやってないのに……』

「……泣きそうになってる所悪いんだけど、[折原臨也]がそう電話で話しただけで証拠なんて全く無いし、信じてる人間なんて半分もいないと思うよ?」

『…………っ』


そうだとしても―――臨也本人は何もやっていないのに、ありもしない罪を知らない人間に言えば[折原臨也ならやるかもしれない]なんていう疑念になるだろう。


―――そんなのやだよ……。


「それで[折原臨也]は何て話したのかな?」

『……ヤバイ奴らに目を付けられた、って……。見逃して欲しければ200万払って欲しいって』

「……へぇ。金銭的な要求は今回が初めてだね。色々な所に電話したせいで目を付けられちゃったかな?」

『……いいの?』

「君が心配する事はないよ。それに……少し手伝ってほしいんだよねぇ」


[ヤバい奴ら]というのがどんな人達なのか私には解らないが、彼は納得したように頷き、冷静に分析していく為、

そんな事でいいのか―――という意味を込めて問いかけると臨也は私の手を引っ張って、強制的に自分の足の間に入れると甘えるように後ろから抱きついてくる。


『……また浮気みたいな事するの?』

「今回はそんな事じゃないよ。もっと簡単な事さ。……200万を指定された場所に持ってって欲しいんだよねぇ」

『!?……はぁ!?そ、そんな事私ができるわけないじゃんっ』

「他の人間に頼みたいのは山々なんだけど……君の声は聴かれてるだろうし、違うと解ったら何をしてくるか解らないからねぇ。

一応護衛もつけるし、セルティにも頼んである。だから君は運ぶだけでいいんだ、簡単だろう?」


何をするのか不安になったのだが、まさか私が200万を運ぶ事になるとは思っても無かった。彼も嫌々、といった感じに眉を顰めており、本当は行かせたくないのだろう。

その顔だけで私の心はどんよりとした雨雲から快晴の青空になった気がして―――彼の手を、ぎゅ、と握りながら小さく頷くと彼の私を抱く力も強くなり―――


「監視カメラと防犯ブザー。何かあった時の為の携帯。……あまり使いたくないんだけど、中にはシズちゃんの携帯の番号が入ってるから。それと……俺のナイフもね」


と言いつつ引き出しを開けて一つずつ説明を入れていく臨也。

彼の中では天敵―――平和島静雄さんは駒のように、何かあれば、そして何かあった時の為に盾になってくれる人間として扱われている。

簡単に言ってしまえば、[いいように使われている]のだが、自分が静雄さんのテリトリーに入って危険な目に遭うよりも、まだ友好関係のある私が行った方が安全だ、と考えたのだろう。


それに静雄さんは私や子供達の事を大事にしてくれているので、もし、何かあった時に彼を呼べば怪我をさせないように―――と守ってくれるのは確かだ。

心強いのか、不安なのか解らなくなりそうになりつつ、臨也は私を抱きしめていた腕を離し、準備を始めるようだ。
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