折原家

□新一年生の卵
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息子は孫達から目が離せないようであちらこちらへと走っていく双子を追いかけ、とても大変そうだ。

私も一緒になって追いかけようとしたのだが、歳なのか、それとも運動不足からなのか二人に追いつく事は無く、臨也から休憩するように言われてしまった。

楽しそうに話をしている響子と愛子さん。そして、孫達に悪戦苦闘している息子の姿を眺めつつ、目的地であるランドセル売場へと足を運んだ。


臨也が小学生だった頃は赤と黒しか色はなく、女の子は赤、男の子は黒―――

というように決まっていたのだが、今の時代は女の子が暗い色を、男の子が明るい色を持っていても不思議ではないようだ。

それに色のバリエーションも確実に増えており、黄色だったり紫だったり―――青だったり、ピンクだったりと昔では考えられないような色まである。


沢山の色に驚きつつ、どの色が良いのか―――と孫達に問いかけると二人は迷う事無く、筑紫は黄色のランドセルを、

紫苑は紫のランドセルを選び、顔は新しい玩具を手に入れた子供そのものであり、可愛らしく、九瑠璃や舞流、そして臨也にもこんな時代があったのだと思い出し、悲しくなった。

大事にするように―――と念を押して言うと解ってる、とばかりの笑顔で大きなランドセルを抱えながら頷き、お礼を言う双子。


きちんと躾をしている息子と愛子さんに心の中で感謝しつつ、二人の頭を撫でれば、

幸せそうに笑って父親である臨也に自慢するように報告している姿にいい子に育ったな、と呟けば隣に居た響子が笑いながら本当に、と同意してくれた。

可愛らしい孫達に恵まれて、優しい愛子さんを嫁にもらった臨也は本当に幸せ者だ。これからも大事にするんだぞ。


―――――――……

数時間後 某マンション

愛子視点


『ふう……楽しかったけど、緊張しちゃったよ』

「そうかい?君はとても楽しそうに見えたけどねぇ」


今日は臨也の両親であり、そして私の義理の両親となった折原四郎さんと響子さんと会う日であり、子供達は朝からそれはそれは楽しみだ―――と言わんばかりにウロウロしており、

臨也から何度も[少しは大人しくしてなよ]と注意を受けていたが、それすらも自分達にある興奮は止められないのか、

ソファに座りながら足をバタバタさせ[まーだー?]と不満の声を漏らしていた。

そして時間となり、約束の場所へと向かえば、前に会った時と変わらずの義理の両親が立って私達を迎えてくれた。


最初は何から話そうか―――と考えていると向こうから双子の事を聞かれ、それに答えているうちに段々会う前の不安などが薄れていき、

響子さんと、子供のあるある話に花を咲かせる事ができた。

臨也の方は子供達を見ているようで、あちらこちらに興味を示す双子に[買わないよ]と言ったり、[大人しくしてな]と注意したりと大変そうだ。

だが、お昼を食べる頃には双子の手―――というか、私の鞄の中には二人が遊ぶ為の玩具が入っており、四郎さんも一緒になって選んだのだから文句も言えない。


――「全く……。父さんはあの子達に甘いんだから」

――『私には解らないけど……そういうものなんじゃないかなぁ』

――「それにしても甘すぎだよ。幾ら子供達が可愛いからって」

――『……臨也も人の事言えないけどね』


4人でランドセルを見つめている中、私と臨也は遠くから眺めており、どんなランドセルが良いのか、

と聞いている四郎さんの顔は時々スーパーで見るお爺ちゃんやお婆ちゃんのようにデレデレで、[何でも好きな物を買ってあげよう]と言うんではないか、とこっちがハラハラしてしまう。

響子さんも二人が可愛くて仕方ないのか、二人が選んだランドセルを眺めながら3人の子供達の事について思い出を語ってくれた。


臨也はとてもいい子だった、と。大きくなり、妹達ができても、いいお兄ちゃんをやってくれている、と。

臨也にしてみれば、恥ずかしい過去を赤裸々に子供達に公開されている事になるので遮るように[もういいじゃないか]と遮っていた姿は忘れる事はないだろう。
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