折原家
□突撃隊
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「イザイザのデレなんて滅多に見られるものじゃないわっ!カメラカメラっ!」
「…………」
遊馬崎さんから借りたデジカメを構え、臨也を撮影していく狩沢さん。
表情からするとそこまで[照れている]という感じには見えないのだが、遊馬崎さんと狩沢さんにとってはそれでいいらしい。
そんな彼女に臨也は何度目か解らない溜息を吐き出しつつ、コーヒーのおかわりを催促してきたので素直に立って台所へと向かう。
「へー。愛子っちがイザイザのお世話係って感じなんだねー」
コーヒーを淹れている間、狩沢さんは感心したような言葉を吐き出すので苦笑しながら彼から受け取ったカップにコーヒーを注ぎつつ、返事を返した。
『まあ。出会ってから……ここに住んでからずっとパパのお世話係と言うか……何て言うか……』
「あまりこっちの世界には踏み込ませたくないからさ。必然的にね」
「へー。メイドと主人って感じだね!やっぱり夜はメイドさんは服を脱がされ、御主人様に―――」
「狩沢さん!まだ朝っす!それにまだ健全な子供達がキラキラした目でこっちを見てるっすから!」
「……。ゴホン……二人はパパとママ、どっちが好き―?」
何を想像したのかは解らないが、興奮しながら語る狩沢さんに遊馬崎さんは何かを感じ取ったのだろう。
慌てて大きな声を出して言葉を遮り、二人が不思議そうな表情をして見ている事を言うと気を取り直したのか、簡単な咳払いをして双子に問いかけた。
「ママっ!」
「ママ、だいすきー!」
「…………」
「あらら……イザイザって不器用な愛情って感じ?」
『うーん……そんな事、無いと思いますけど』
迷う事無く答える二人に拍子抜けしたような声を出し、私に問いかけてくるので色々な場面を思い出してみるが―――
彼はいつも、子供達を大事にしているのが誰から見ても解るぐらいに接しているので、[子供の愛し方が解らない父親]というドラマでしか見た事のない父親のイメージは無かった筈だ。
「じゃあ……パパの事、嫌い?」
「ううん!パパもだいすきー!」
「でもねー、とーととママならママがすきー!」
「……そういう事。良かったじゃん、イザイザ」
「……別に子供達に嫌われてない事ぐらい、あの子達の態度を見たらわかるさ。筑紫、紫苑おいで」
「「?」」
ウインクするように臨也に報告する彼女だったが、彼は小さく鼻で笑って双子を呼ぶと自分の膝に座らせ、頭を撫でた。
どうして父親がそんな事をするのか解らない双子は首を傾げていたが、大好きな父親に抱っこされ、頭を撫でられているのでとても嬉しそうだ。
「かーわーいーっ!あーリアルでもこんな可愛い子供がいるなら欲しいなぁ」
「中々筑紫ちゃんと紫苑君級の子供は見つからないっすよ、狩沢さん。臨也さんのDNAと愛子さんのDNAがないと!」
「やっぱそうだよねー。イザイザ級のイケメンじゃないと紫苑君みたいな種は生まれないか―」
そんな姿を見て狩沢さんは顔をだらしなくさせ、[いいないいなぁ]と子供のようにキラキラさせており、
ちょっとした爆弾発言をしていたが二人にとっては特に気にする事でも無いらしい。
そんな事をしているとそろそろ二人のお弁当を作らないといけない時間になり、立ち上がってもう一度台所に入っていく。
「イザイザはご飯とか作らないのー?」
「それなりには俺も作れるよ?けど……全部俺がやったら愛子の仕事がなくなるからねぇ」
「いいじゃん!料理男子!丁度朝ごはんの時間だし、イザイザが朝ごはんを作ればいいと思うよ!」
『パパがご飯作ってくれるの?』
「……解ったよ、俺が作ろうじゃないか」
私が冷蔵庫から今日の食材を取り出している間、二人はこちらを見ながら問い掛け、臨也にご飯を作らせよう―――という魂胆が丸見えだった。