折原家
□行ってみよう!
2ページ/23ページ
それがまさかこんな形で叶うとは思わなくて―――二人に話したらきっと喜ぶだろうな、と心の中で微笑みつつ、父親である男―――折原臨也に話をしたら何と言われるだろうか。
―――簡単にOKしてくれる、わけないよねぇ……。
―――でも、いつも最後にはOKしてくれるし……期待しても、いいのかな?
いつもの会話を思い出し―――絶望的だった動物園へ行く許可も淡い期待を持つ事ができる。
しかし、彼は[いつも最終的にはOKしてくれるから]という理由で許してくれる事は無く、一癖も二癖も文句を言われ、やっと許可が下りるのだ。
心の中で溜息を吐き出すが、そんな彼に惹かれたのは間違いなく自分なので[子供達の為に頑張りますか!]と気合を入れ直し、他の母親達の会話に耳を傾ける。
「それでね―――」
―――――――……
新宿 某マンション内
愛子視点
「動物園……?」
「「!どーぶつえんっ!」」
子供達を保育園にお迎えに行き、いつものように買い物をして、いつものように家に帰る。作業にも似た行動だが、今日は保育園にお迎えに行く間、
喫茶店で昼食を取った母親達と共に日時や連絡先の交換などをした後、[それじゃあまた連絡するわね]という一言と共に別れた―――といういつもとは違う行動をとったのだ。
そして丁度椅子に座り、頬杖をついて人間観察をしていたであろう臨也がいたので今日の話をすると―――子供達は期待に目を輝かせ、臨也は目を細め、どこか面倒臭そうだ。
『うん、私入れて5人ぐらいのお母さんと旦那さん、子供達と動物園に行こうって』
「……へえ。動物園、ねぇ」
『……パパは動物園、行きたくない?』
「行きたくないってわけじゃないさ。誘ってくれた事は勿論喜ばしい事だし、君が保育園の交友関係を守ってるからこその結果だという事は解るんだけどねぇ」
「とーとっ、キリンしゃん!」
「ぱおーんっ!」
「ゾウしゃんっ!」
「ひひーんっ!」
「……?……!うましゃんっ!」
「ちゅーちゅー!」
「ねじゅみしゃんっ!」
紫苑は既に動物園に行く事は決定しているらしく、キリンの真似をして遊ぼう、
と言わんばかりに言うと何故か筑紫が鳴き真似をし始め、それに答える弟―――という図が目の前で繰り広げられていた。
『ほら、二人とももう行く気満々だよ?』
「だから行きたくない、とは言ってないだろ。それに駄目なんて一言も言ってないよ?」
『でも、いつもなら[駄目]とか[やだ]とか言って断らせようとするじゃん……』
「それは君の友人に対してだろう?あの子達の事に関しては流石にそんな事も言ってられないからねぇ」
『……理不尽』
「それだけ君が大事って事さ。まあ勿論子供達も大事だけどね?」
そう言って笑う臨也。
しかし、心の中はあまり良く思っていないのは確かのようだ。
いつもなら笑顔を作り、貼り付けるのだが、その貼り付けた笑顔の中に眉を一つだけ動かし、嫌な物を見た時の顔を無理矢理喜びの笑顔に変えているかのようだ。