折原家
□行ってみよう!
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[親子遠足]と同じ内容にならないように気を付けて書いていこうと思います;
<行ってみよう!>
新宿 某喫茶店
愛子視点
「猫ちゃん、無事に飼い主の所に戻れたらしいわね」
「折原さん、大変だったんでしょー?」
『いえ、そんな事は』
「うちの息子が大喜びしてましたよ。筑紫ちゃんから仲良しカードをもらったとか……」
私は今―――ママさん会議、というか同じクラスの数人の母親が集まってご飯を食べたり、世間話に花を咲かせる場に来ている。
話の話題は、先日の保育園の迷い猫の話であり、息子や娘に聞いたのか私に詳細を求めてきたり、同情した目をこちらに向けてきたりと様々だ。
―――……仲良しカード……?
筑紫ちゃん―――折原筑紫の名前が出てきた、という事は確実に娘が渡したという事であり、私は知らない情報だ。
首を傾げつつも[そうなんですか]と相槌を打ち、一人その事について考える。
―――子猫が居た時だから……多分その時、だよね……。
―――……。……別に話して貰えなかった事が寂しいわけじゃないし……!
―――って……何で心の中で言い訳しなきゃいけないんだろう……。
一人でああでもない、こうでもないと首を傾げている間に何かしら母親達の間で決まったようで[晴れるといいわね]とか[きっと子供達、喜びますよね]という話に流れており、
全く聞いていなかった私は気まずさを抱えつつ、[ええと……]と申し訳なさそうに吐き出せば母親達の中の一人が気付いたようで笑顔で説明してくれた。
「今度のお休みにこのメンバーで動物園に行きましょう、っていう話をしていたんですよ。
せっかくですし、子供達や旦那さんにも加わって貰えれば友人関係も生まれるかもしれませんからね」
「男は男同士。子供達は子供達同士。私達は私達同士。世界が広がると思いません?」
『確かに……それは楽しそうですね。遠足みたいで』
「遠足……確かにそうかもね。子供達の中には、まだクラスに慣れてない子もいるんじゃないかと思うのよ。私の娘もそう……毎日保育園行くのやだやだぁ!って」
「あら、そうなのー?凄く活発そうな子なのに」
「前は、ね。でも、一度男の子に悪戯されてから引っ込み思案になっちゃって……。せっかく紫苑君やリン君に誘って貰っても泣いて喚いて、もう大変……」
『心の傷は見えませんからね。きっと、凄く傷ついたんだと思います』
「……どうなのかしらねぇ。早く笑顔で行ってきます、って顔が見られればいいんだけど……」
しんみりとした空気が流れ、他の母親達は[大変ね]と同じ子供を持つ親として同情にも似た表情でその母親を見つめており、僅かな静寂が流れたが―――
「きっと見られるようになりますよ!その為に計画したんですから!」
一際元気そうな表情の母親が胸を張るように―――絶対の自信があるかのように声を出せば、[そうよね][そうね]と同意する声が溢れ、重い空気は一瞬にして消え去ってしまった。
―――こういう人が居てくれると助かる……。
私では絶対にそんな気が利いた言葉は吐き出す事はできないと自分で解っている。
だからこそ、場の空気を一瞬にして掻き消してしまうような―――そんな存在がこの場に居てくれると私としても助かるのだ。
―――それにしても……動物園かぁ。
―――行きたい、って言ってても中々行けなかったんだよね……。
子供達は[動物園に行きたい]と言ってても父親がそれを許してくれず、中々行く機会がなかった場所だ。