折原家
□あちこちどっち?
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「それで、申し訳ないんですけど……預かってもらう事、ってできますか……?」
『それは……どういう事でしょうか?』
「本来なら私達教師が迷子の子猫を預かるんですが、生憎預かってくれる先生がいなくて……私の所もペット禁止で、困り果てている所なんです。
それに二人ともあの子猫が気に入ってるみたいですし……本当に申し訳ないんですが、お願いできますか?」
どうしよう―――そう思った。
ここで臨也に連絡するわけにはいかないが、あそこは彼が彼の為に使っているマンションであり、ペット禁止は聞いた事はないが、マンションなのでもしかしたら禁止なのかもしれない。
―――困ったなぁ……。
「あ……っ、駄目なら駄目でいいんです!他の保護者の方にも連絡しますし、他の子供達も預かりたい、と言ってくれる子もいますし……無理なお願いだと解っているので……すみません」
『……。一度、旦那に連絡してみます』
「お願いします……」
頭を下げ、謝る教師。
本当は自分が預かり、自分の手で子猫を親元に帰してあげたいのだろう。しかし、それは叶わない事を解っている為、こうやって親を探す名乗りを上げた子供達の親にお願いしているのだ。
解っているのだが、私の一存で決めるわけにはいかないので臨也に連絡する為、携帯電話を取り出し、連絡を入れる。
『……あ、もしもし』
[こんな時間に電話するなんて珍しいじゃないか。子供達に何かあったの?]
『子供達、ってわけじゃないんだけどね……。あのマンションってペット禁止?』
[?……君の言いたい事が良く解らないんだけど]
『え、えーと……子供達がさ、迷い猫を見つけたらしいんだよね。それで……臨也に協力して貰って親元に帰したいって。それで……その子猫も預かりたいんだけど……駄目、かな?』
駄目だ、そういうと思った。
彼が[はい、どうぞ]と言うわけもないのは分かっているので[やっぱ、今の無し。忘れて]と言おうとしたのだが―――
[いいんじゃない?特にペット禁止とは言われた事ないし、あの子達がやりたい、っていう事は極力やらせてあげたいからね]
という臨也の言葉に携帯電話を落としそうになったが、慌てて力を入れ直し、[い、いいの?]と聞くと彼は―――
[猫は好きだよ]
と一言だけ呟き、[早く帰ってきなよ]と付け足すように呟かれたかと思えば次の瞬間には電話は切れてしまっており、呆然と携帯電話を片手に持ちながら立っていた。
「ど、どうでした……?」
『……っ、OKしてくれました』
「そ、そうですか……!ありがとうございます!」
教師の言葉で我に返り、臨也が肯定してくれた事を伝えると先生は目を見開いて驚き、そして喜ぶように笑って何度も頭を下げている。
「とーと、いーっていったー?」
「ねこしゃんとおうちかえるー!」
『うん。猫さん、おうちで預かっても良いよって言ってくれたよ』
「!ほんとー!?リカちゃんたちもいっしょにねこしゃんのママさがすーって!」
「リンくんもー!」
この空気を見計らったかのように子供達はとてとてと小さな足でこちらへとやってきて、抱きつくように問いかけてくる。
教師と同じような説明をすると二人は目を輝かせ、他の子供達と一緒に探す事になったようだ。手の早い子供達だ。
「ねー、ママー?ねこしゃんがにーにーっていってるー」
「おなかしゅいたのかなー?」
先生に用意して貰った猫用のケージに入れ、子供達の友達に別れを告げて歩いている時、双子は何かに気付いたのか、私に向かって問いかけてきた。