折原家

□あちこちどっち?
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「かわいー」

「かわいーかわいー」

「あたしもだっこー!」

「あいもー!」


紫苑が抱っこした事によって、先程まで近くで立って見ていた女の子達が近付いてきて[わたしもわたしもー]と取り合うように抱っこし始め、

[いたいいたいになるからめーっ]と、紫苑が注意するとツルの一声のように黙ってしまい、周りは静寂を取り戻す。


「どうしたの、皆。こんな所で遊んでないであっちで皆で鬼ごっこして遊ぼ?」


やっと気付いたのか、教師が人だかりまでやってきてズイズイと輪の中へと入っていき、

声を掛けると女の子達の中に居た子猫を見つけ、[猫さん、どうしたの?]と同じ視線となり問いかけた。


「ねこしゃん、まいごなのー」

「おかあしゃん、いないいないー」

「ママどこーっていってるー」

「そっかー……。猫さん、ここに迷い込んじゃったんだね」


筑紫を筆頭にそれぞれの言葉で教師に伝えると大体の予想がついたのか、ゆっくりと子猫を抱き上げ、

[先生が猫さんのお母さん、見つけてあげるね]と笑って連れて行こうとするが―――


「あたしがやるー!」

「ぼくもー!」


顔の似ていない双子が手を挙げて名乗りを上げ、他の子達も[あいもやるー!][ぼくもー!]と口々にそう言った。


「でもねぇ……」

「とーと、じょうほうやしゃんだもん!ねこしゃんのママ、すぐみつけてくれるもん!」

「パパ、しゅごーいもんっ!」

「じょうほうやしゃん、すごいすごいよ!」

「紫苑くんのパパ、かっこいーの!」


渋る教師に紫苑と筑紫は自分の父親にかかれば、子猫の親なんて簡単に見つけられる―――そう断言するように、

そしてどれだけ自分達の父親が凄いのかを教師に伝え、周りも見た事のある子達は賛成し、見た事の無い子達も双子が賛成するなら―――と賛成のようだ。


「……解った。でも、筑紫ちゃんと紫苑君のパパとママが駄目、って言ったら先生が探すからね?」

「とーともママもやさしーよー!」

「いいよーっていうもん!」

「じゃ、これで猫さんのお話はおしまい!次はみんなで鬼ごっこだ―!」

「おにごっこー!」

「「やるー!」」


―――――――……

数時間後 某保育園

愛子視点


「―――という事でして……」

『……二人とも……』


先生から事情を説明して貰った私。

何でも二人が子猫の親を探す事に名乗りを上げたらしく、父親である男―――折原臨也にも協力してもらいたいそうだ。

申し訳なさそうな先生に私も断るに断れなくて―――それでも、二人が[情報屋である折原臨也]という人間を肯定してくれる事を有難く思った。


それに、周りの子供達も[情報屋]という特殊な仕事をしている父親に不快感を持つ者はいないようで今の所、ホッと胸を撫で下ろしている。

猫は今、子供達の玩具のように遊ばれており、それでも先生の[動物さんは優しくしてあげなきゃね]という一言を忠実に守り、乱暴に扱う子供達はいない。
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