折原家
□謹賀新年
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<謹賀新年>
1月1日 朝 臨也のマンション
愛子視点
「あけまして、おめでとう」
『あけましておめでとう。また1年が始まるんだね』
今日の0時に彼と共に新年の挨拶をして、朝起きて[おはよう]と言わんばかりにもう一度新年の挨拶をした。
1年、というのは本当にあっという間だ。まだ12月が始まったばかりと思っていたのに既に昨日は大晦日であり、子供達と共にお蕎麦を啜って楽しく1日が終わった。
そして今日―――世の中では[元旦]と呼ばれる日であり、1年の最初をお祝いする日でもある。
この日に御節(オセチ)を食べたり、お雑煮を食べたりするわけだが、子供達はまだ小さいのでお餅を小さくして喉に詰まらせないようにしなければならない。
彼―――折原臨也も甘えているのか、[俺も小さいのがいいなぁ]と言ってくるので買ってきたお餅を小さくしてお雑煮にするつもりで用意したのですぐにご飯の用意はできる筈だ。
しかし、布団から出るのが躊躇われるほどの寒さにもう一度布団に包まり、[さーぶっ]と暖を取っていると臨也が目を細め、口に弧を描く。
「1年の始まりって事は全てリセットされるわけだよねぇ。それならさ、去年よりも更に君と深く愛し合えばもっともっとお互いの事がわかると思わない?」
『もう、何言ってるのか解らないからね?』
そう言いながら臨也は私の上に馬乗りのような状態になると[君と愛し合いたいって事だよ]とニコリと微笑んでゆっくりと触れ合うだけのキスをする。
それだけでは足りないのか、[いいよね?]と耳元で囁きつつ、左頬から額、
そして右頬へとキスをすると存在を確かめ合うような深いキスへと変わり、私もそれを受け入れるかのように彼の首に手を回す。
―――何もしたくないなぁ。
こうやって臨也と抱き合って―――猫のように甘えてくる彼と共に1日過ごせたらどれだけ幸せだろうか。
しかし、情報屋にはきちんとした休みが無い為、あと少ししたら彼も起きなければならないし、子供達も扉を叩いて[おきてー]とやってくるだろう。
外は凍えるように寒くて―――臨也も[外に出たくないなぁ]と言いつつ、私と布団で暖を取っており、キスで満足したのか、隣で丸まっている。
「ねえ、愛子」
『……あー、はいはい。付けてくればいいんでしょ……もう。私だって寒いんだからね』
「これだけで気付いてくれるなんて流石だねぇ」
『毎日付けろ、うるさいのはどこの誰かなぁ?』
「紛れも無く俺だね」
丸まっていたかと思えば、彼は私の名前を呼んだ事によって[またか]と思いつつ、暖かい布団からおさらばしなければならない。
臨也は寒くなってきてから殆ど毎日、私に暖房を付けてきて、と言うので既に今では名前を呼ばれただけで何をすればいいのかまで解ってしまうまでになっていた。
悪びれた様子も無く、ヘラ、と笑う臨也にイラっとしつつも、いつかはどちらかが暖房を付けなければならないので仕方なく、私が行き、本当なら感謝してほしいぐらいだ。
『ほら、お望み通り付けてきたよ』
「悪いねぇ。やっぱり外が寒いとやる気が出ないしさぁ。君にはいつも感謝してるよ」
『はいはい。ほら、もうすぐ起きる時間じゃないの?』
「……本当だ。楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまうものだねぇ」
時計を確認しながら問いかけると、臨也も携帯電話を開き、目を細めて全身で[嫌だなぁ]と言っているかのようだ。