折原家
□クリスマス
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「お菓子、買えないよ?」
「いいもん!サンタしゃんがぷれれんとくれるのまってるっ!」
「あたしもまってるもん!」
頑固な所は誰に似たのだろうか。
一歩も譲らない二人に臨也も私も参ってしまい、溜息をどちらかともなく吐き出す。
お菓子の為なら、父親だろうと差し出す双子がお菓子が買える絶好のチャンスである買い物に行かないなんて―――よっぽど欲しい物があるんだな、と一人、納得していた。
『……解った。じゃあママ一人で買い物に行ってくるからね?』
「……うー……」
「……ママ、ひとりー?」
[一人で買い物]という言葉に二人は反応したのだろう。
先程とは違い、心を揺るがし、サンタさんと母親を天秤にかけているらしい。私としては母親の方に傾いて欲しいのだが―――
「……まってるもんっ!」
「……ぼ、ぼくもっ!」
半分泣きそうな顔をしてサンタさんに天秤を傾けた双子。
まさか私までもがサンタさんに負けるなんて―――僅かにショックを受けていると、臨也が後ろから肩を叩いて[俺の気持ち、解ってくれた?]とニヤニヤしながら問いかけてきた。
―――何か、腹立つ……っ!
イラ、としたものを抱えつつも私は[そうだね]と短く返せば、臨也はやはりそのままの表情で[怒らないでよ]と手をヒラヒラさせていた。
『ママ、一人寂しいなぁ。パパと一緒にお買い物、行っちゃおうかなぁ』
「それは良い考えだねぇ。そうしようじゃないか。二人は仲良くお留守番してるみたいだからね」
演技がかった言葉を吐き出せば、臨也は本気にしているのかそれとも冗談で言っているのか、ノリノリな表情で二人に目を向けている。
両親が外に出て行く。
今波江さんは矢霧君にクリスマスプレゼントを選びに行く、とか言って出て行ったきり、帰ってこない。きっと張間さんと揉めているのだろう。
なので私と臨也が出て行ってしまえば、実質この家に残るのは二人だけとなる。二人だけでおつかいには行った事あるが、お留守番は一回もない。
常に臨也か波江さん、そして私がこの家にいるので二人が二人だけとなるのは寝る時間だけだ。
まだ5歳の二人にお留守番なんてできるのか―――と挑発したような顔をすると耐えきれなかったらしく[やだぁ]と泣きながら首を振る。
「それなら買い物に行くかい?」
「…………」
「…………」
首を振る二人。
どうしてもサンタさんを家で待ちたいが、それでも母親との買い物には行きたい。そんな心境なのだろう。
『もう……仕方ないなぁ。私一人で買い物に行って二人のお菓子、買ってきてあげるから泣かないの、ね!』
「う、うん……っ」
「ママ、ごめんなさい……」
これでは話が進まない。
私は溜息と共に二人の頭を撫でれば二人は涙を拭っていた手を止めて嗚咽混じりに小さく頷く筑紫。しょんぼり、としつつも罪悪感で謝る紫苑。