折原家
□イルミネーション
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彼はいつも通りあまり乗り気ではなく、断りたい―――そんな言葉が聞える程の表情をしている。
だが、既に双子の中ではイルミネーションを見る事は決定しているらしく、[はやくいこー!]と満面の笑みを浮かべていた。
「人も多いだろうし、確かそれって池袋の方だよね?知り合いとか多そうだから今回はやめとくよ」
「やーだーっ!パパもいっしょにいこー!」
「ぼくのチョコ、はんぶんこするからー!」
「……物で父親を釣らないでくれる?」
前に臨也が風邪を引いた時に双子の大切にしていた苺とパンをもらい、嬉しそうにしていたのを覚えているのか、二人は父親に貢物をすれば喜んでくれると思ったらしい。
確かに臨也は2人がくれた物を大事にしており、食べ物ならば大事に大事に食べて[これ、俺がもらったものだから愛子にはあげないよ?]と特にいらない物を自慢げに見せてくる事もあった。
『家族みんなで遊びに行きたいからさ。ね?みんなで行こうよ』
「君達だけで楽しんでくればいいじゃないか。それに、明日も仕事があるんだ。そう簡単に穴を開けるわけにはいかないんだよねぇ」
正論を語る彼の言葉に反論できる筈も無く、私達は黙ってしまい、子供達も行きたかった―――という目でこちらを見つめている。
―――私に言われてもなぁ……。
どうにかしてあげたいが、どうにもならないのが彼の仕事だ。
それにイルミネーションを見に行こう、という話題になったのだってついさっきであり、彼の仕事は何日も前から決まっている。それを比べるなんてできないし、優先させる事もできないのだ。
「……。……行きたいのは俺だって一緒さ。それに絶対明日行かなきゃいけない、ってわけじゃないんだろう?まだ数日は余裕があるんだからさ。その間には俺も暇を作る事にするよ」
「ほんとー?」
「俺は嘘をつかないよ」
目と口を細めて笑う彼の顔は作られたものであり、子供達は騙せても私は騙せない。何か言おうか迷ったが、子供達の前で言う事も出来ず、苦笑を浮かべる私。
―――最初から、行くつもりないのかな……。
家族で行きたい―――それは私達3人の願望であり、彼の願望とは限らない。臨也もそれを解っている筈なのに何故作り物の笑顔を浮かべたのか―――謎に包まれたまま家族と共に時間を過ごしていく。
―――――――……
夜 寝室
愛子視点
『ねえ、臨也……?』
「……君が言いたい事は解ってるつもりだよ。今日の事だろう?」
『……うん』
横になりながら彼に問いかけると臨也はゴロリ、とこちら側に顔を向けて溜息を吐き出す。
ずっと、気になっていた。だけど保育園から帰って来てしまえば寝るまでずっと一緒にいるので話題を振る事が出来ず、モヤモヤとした気持ちだけが残ってしまった。
臨也は私が聞く事を待っていたかのように口元を釣り上げ、言葉を紡いでいく。