折原家

□イルミネーション
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「それで、紀田君がどうしたんだい?今日3人と楽しそうに買い物に出掛けたじゃないか。また明日も出掛ける、っていうなら俺は認めないよ?」


叩かれた手を摩りながら目を細める彼に、私はやっぱり無理かな―――と諦めつつも紀田君から聞いた情報を臨也に伝える。

双子はやっと父親の邪魔がなくなった事を喜ぶかのように、白い画用紙に向かって楽しそうに絵を描いているようだ。


少しだけチラ、と見えたのは姉―――折原筑紫は池袋最強である平和島静雄さんの似顔絵を描いているようで特徴的な黄色と黒いバーテン服を自分なりに描いており、

弟―――折原紫苑はロボットだったり、自分の好きな絵を自由に書いており、隅っこの方に父親を登場させているのが子供達なりの父親への愛情か。


「イルミネーション、ねぇ。やるのは知ってたけど……まさか、行きたいなんて言わないよね?」

『…………』


私の心を読むかのように図星を突く臨也。

ギクリ、と肩を震わせながら言い訳のように[子供達と一緒に見たい]と言えば、まんざらでもないのか、もう一度[イルミネーション、ねぇ]と呟いている。


「いる、みねーしょー?」

「ねーしょん?」


私達両親の言葉を聞いていたのか、それともお絵かきに飽きたのか、二人は同時に顔を上げて首を傾げていた。


『イルミネーション、ね。キラキラーって光るんだよ』

「キラキラー?……おほちしゃまっ!」

「おほちしゃまになるのー?」


どう説明したらいいのか解らなくて[キラキラ]と表現したのだが、双子は七夕の歌を思い出したのか、口々に[おほちしゃま]と口にし、星が見えるんだと理解してしまったようだ。


「イルミネーション、っていうのはね星の事じゃないんだ。クリスマスの日にサンタさんが光ってた家を二人も見た事あるだろう?」

「サンタしゃん……キラキラっ!」

「キラキラのサンタしゃん、みたっ!」


いつだったかのクリスマス―――夜に少しだけ家を出た私達家族は、

どれぐらいの電気代がかかるのか不安になる程のイルミネーションを創り出していた家を見つけ、双子は[キラキラしてる!]と指をさして大喜びしていた事があった。

それを思い出したのか、[イルミネーション]というのはキラキラに光っている飾りだと理解してくれた。


「キラキラのサンタしゃん、みたいっ!」

「ぼくもー!サンタしゃんのおうち、いこー?」

「まだ時期にはなってないからねぇ。またクリスマスの日にでも見に行こうか」

「「うんっ!」」


段々と話が逸れているが、私の目的は家族でイルミネーションを見る事だ。

確かにまたあのイルミネーションは見たいとは思うのだが、今は明日から行われるイルミネーションの方が先なのだ。


『二人も、イルミネーション見たいよねー?』

「いるみねーしょ、みたいっ!」

「あたしも、いるみねーしょ、みるー!」

「…………」


いつもの流れに持ってくる事ができた。

双子は私と一緒に覚えたての言葉を発音し、少し違うが、[イルミネーション]に聞こえるから良しとしよう。
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