折原家

□イルミネーション
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<イルミネーション>


11月中旬 池袋某所

愛子視点


「そろそろ本格的に冬になるのかー。一年ってあっという間だな」

「本当にね。後1ヶ月で一年が終わっちゃうんだから」

「そうですね。悔いのない1年にしたいです」


久しぶりに足を踏み入れた池袋。

特に用事がなければこっちには来ないのだが、今日は高校生からの友人である3人と一緒に買い物に出掛け、そのまま池袋の街を散策している真っ最中だ。

他のみんなは自分達の物を買ったり、恋人へのお土産を買っている中で私だけは子供用のプレゼントを見てしまうのは自分が母親だからなのか。


―――母親になってるのかな……。


[母親]というのは子供を持つ親の事だが、その[自覚]はいつからなのだろうか―――と時々思う事がある。

子供が生まれた時なのか、それとも子供が出来た時なのか―――それとも、子供と一緒になって遊んでいる時なのか。

そんな事を考えていると友人の一人―――紀田正臣君が、ポツリ、と呟く。


「確か……明日だったよな」

「え?……ああ、うん。確かそうだった筈」

『?明日、何かあるの?』

「何っ!?愛子、お前知らないのか!?……まあ、新宿に住んでたら知らねぇよな」


確認するように呟く紀田君に頷きつつ、肯定する青年―――竜ヶ峰帝人君。

私が疑問に思っている事が信じられない、と言わんばかりに目を見開き、大仰に驚きを表現するが、すぐに私が池袋に住んでいないと気付くと、納得したように頷いた。


「あれだ、イルミネーションが明日の18時からいつだったかまでやっててよ。場所は―――」


―――――――……

数時間後 新宿 某マンション

愛子視点


―――良い事を聞いた……!


早く知らせたい。

子供達は目を輝かせて喜ぶであろう話題を、まさか手に入れられるとは思わなくて。ここで旦那の名前を出さないのは、彼が嫌がるからだ。


みんなで出かける―――なんて事を彼が進んでやる筈も無く、子供達はいつも[あそびたーい!]と駄々を捏ね、旦那に甘えるが彼はそれを[駄目]の一言で一刀両断し、あまり叶った事は無い。

時々は遊びに行かないと―――という思いがあるのか解らないが、子供達の願いを叶え、遊びに出掛けたりする。本当に気まぐれに、だが。


『ね、パパ?』

「?」


子供達のお絵かきの邪魔をする旦那―――折原臨也に声を掛けると、彼は不思議そうな顔をして振り返った。


『あのさ、紀田君達から聞いたんだけど……』

「…………」

「とーと、じゃましないでー!」

「しずおしゃんのおかお、くろくなっちゃったー!」


[紀田君]という言葉に反応したのか、彼は眉を少しだけ顰め、口を閉ざす。そんな臨也とは反対に邪魔をされていた双子は口々に文句を吐き出しつつ、彼の手をパチン、と叩いた。
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