折原家

□twin's
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<twin's>


11月上旬 折原臨也のマンション

愛子視点


臨也が風邪を引いた。

それが解ったのは今日の朝の事であり、そんなに熱は高くないのだが、起き上がると気持ち悪いらしくずっとベットで横になっている。

この時期になると寒い時や暑い時―――温度の変化が激しく、子供達が最初に風邪を引き、次に私が移り、そして臨也に移ってしまい、ダウンする結果となった。

横になっている臨也の姿は僅かに苦しそうで―――移してしまった事に対して罪悪感が生まれ、こうして付きっきりで看病している。


『臨也、大丈夫……?』

「……この状態を見て、大丈夫だと思うかい?」

『……ごめん』


臨也の看病をする為に部屋の中に籠る私と移りたくない、という理由で家に寄り付かない波江さん。

前のように子供達の世話をしてくれれば私も彼の看病に専念できるのだが、そうもいかずに困り果てている状態だ。

双子は時々私達の寝室にやってきては[ごほんよんでー]と静かにするから構ってくれ、と甘えてくる。


しかし、本を読み聞かせていると臨也は[眠れないんだけど]と文句を漏らし、双子を部屋から追い出てしまう。今は可愛い我が子よりも辛い方が上回っているようだ。

そんな父親に負けじと部屋に入り、追い出され―――そんな事を何回も繰り返している。これでは彼が休む事ができず、子供達が入ってくる度に[何で入ってくるんだよ]と不機嫌そうだ。


―――セルティさんも仕事だって言ってたし……。

―――岸谷さんにも断られたし……。


最初にその二人の顔が浮かび、そして診て貰った時に頼んでみたのだが、セルティさんには申し訳なさそうに、

そして、岸谷さんにはきっぱりと[無理だよ]と断れてしまい、残りは昔の友人達や彼の家族だけだ。


門田さん達に頼むのはセルティさん達の次に考えたが、狩沢さんが寝ている臨也を見て騒ぐ可能性があり、双子以上に騒がしくなりそうだ。

そしてその次に考えたのは竜ヶ峰君や杏里ちゃんや紀田君、といった高校からの友達なのだが、

二人には[用事があるから]と断られ、紀田君には[あんな奴なんて放っとけばいいだろ]と斬り捨てられてしまった。

残りは彼の家族なのだが―――それは臨也が嫌がりそうなので諦めている。


―――困った……。


「マーマーっ!ごほんよんでー」

「ももたろうしゃん!ももたろうしゃん、よんでー!」

『さっきも読んだでしょ。それと、パパがねんねするから静かにしなきゃ駄目だよ』

「だってママ、いっしょにあそんでくれないもん!」

「ママといっしょがいー!」


寝ている父親は関係無い、とばかりに私に甘え、下で遊ぶという選択肢はないようだ。

悪いと解っているのだが、ここで遊ばせた方が彼の傍に居られるし、双子とも遊んでいられる―――という、最高の条件なのだ。

だが―――


「お前達、下に行ってくれ」


と僅かに威力を持った言葉を吐き出し、双子を追い出す。しかし、二人は頑なにしていやいや、と首を振るので臨也は布団の中で大きな溜息を吐き出し、反対側を向いて眠るようだ。
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