折原家

□Trick or Treat!
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杏里ちゃんもそれを見て、僅かに頬を染めており、もしかしたら彼女も同じような目にあったのかもしれない、と思った。

双子はそれがどういうものなのか解らないらしく同じ方向に首を傾げており、興味津々、といった感じにその衣装を見つめている。


『こ、こんなの臨也の前で着られるわけ、ないじゃないですか……っ!』

「えー?きっとイザイザ、気に入ってくれると思うんだけどーやっぱり駄目ー?」

『ダメ、っていうより私が嫌ですっ!』


駄々っ子な子供のような顔で口を尖らせており、不服そうだが、こんな衣装は絶対に着られない。いや、着たくない。

殆ど水着に近いような露出の高い胸と下半身は短パンでも履いているのか、という程に短く、それでいて何の為に付けられたのか猫のような長い尻尾が短パンの後ろに器用につけられている。


「可愛いのになー。ねー、二人はママのこんな服、見てみたいよねー?」

「みたいっ!」

「ぼくもみたいっ!」


一度私の手の中からその衣装を抜き取り、自分の体に合わせて二人に見せると双子は[いいないいな]とでも言うかのような顔で猫の尻尾らしき尻尾を触っている。


「ほらー、子供達がこんなにもお願いしてるんだよー?あ、でもやっぱりイザイザに頼まれた方が良かった?」

『…………っ』


子供達まで味方に取り、そして[イザイザ]という狩沢さん特有の臨也の呼び方にもう勘弁して、と思いつつ首を振った。


「そっかー残念っ!じゃあ、愛子ちゃんにはもう少し露出の低いコスプレの方がいいかなー?メイド服とかどうー?」

『め、メイド服……っ!?』

「そ!メイド服」


私が本当に嫌がっている事にやっと気付いてくれたらしい狩沢さんは[残念]と僅かに寂しそうな顔をしてそれをドレッサーへと戻し、

[次はどれにしようかなー]と呟きつつ、私に問いかけてきた。

まさか、ここで[メイド服]という言葉を聞くとは思わず、驚いていると、さも当然、とでも言いたげに一つの衣装を取り出した。


「これならそんなに露出高く無いし、愛子たんにも着られるんじゃないかなー?」

『……着るんですか?』

「うん、イザイザの前で。それが恥ずかしいなら私の前でお着替えショーでもやっちゃう?」


[メイド服]、という事は、つまり―――臨也に[おかえりなさいませ、御主人様]というよく解らない挨拶をする、あれの事だろうか。

狩沢さんによく漫画を借りる為、そういった知識はいつの間にか身についてしまい、嬉しい反面、こんな知識は必要だったのだろうか―――と後悔する事半分だ。


「メイドしゃんっ!メイドしゃん!……メイドしゃん?」

「メイドしゃん、ってなにー?」


私と狩沢さんが盛り上がっていると先程の尻尾が気に入ったらしく触っていた二人だったが、こちらへとやってきて話に混ざろうとしてきた。

だが、話の内容と言葉の意味が解らず、首を傾げるばかりの二人。こういう小さい時に[メイド服]だったり、[メイドさん]という言葉を教えた方がいいのか、親として悩む所である。
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