折原家
□Trick or Treat!
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<Trick or Treat!>
10月上旬 池袋某所 狩沢のマンション
愛子視点
「やっぱり愛子ちゃんに似合うのは魔女っ娘だよね!でも、できれば猫耳付けて[にゃー]とかいい……ていうかそうした方が絶対いいっ!」
『…………』
「…………」
「まじょー?」
「ねこしゃんー?」
私は今、どういう経緯を通ってここに来たのか解らないが狩沢さんのマンションにお呼ばれされ、いつの間にか色々な服装に着替えさせられている。
今ここに居るのは私の子供である双子―――筑紫と紫苑、そして杏里ちゃんとその他狩沢さんの知り合い数人だ。
双子がここにいるのは旦那である臨也が仕事で遅くなるらしく、波江さんもどこかに行ってしまう為、二人でお留守番させるのはまだ怖い所があるからだ。
そんな二人の子供にもここに呼んだ張本人である狩沢さんは笑顔で二人を招き入れ、[子供用のコスプレってあったかなー?]とどこか楽しそうだった。
「そうそう!ママ、すっごく可愛くなるから二人とも楽しみにしててね!」
「ほんとーっ!?ママ、かわいいかわいい、なるのー?」
「ママ、かわいいかわいいー!」
『ちょ、ちょ……っ!』
狩沢さんの[可愛くなる]という言葉に二人は目を輝かせ、私の方を向くと早く可愛くなってなって、と希望に満ちた目線で見つめてくる。
恥ずかしくて狩沢さんの口を塞ごうとするが、それが叶う事はなく彼女はニコニコ笑って、諭すかのような口ぶりで言葉を紡ぐ。
「はいはい、慌てない慌てない。素直に褒められて恥ずかしいんだよねー愛子ぴょんはー」
『…………っ』
「大丈夫ですか……?」
顔を真っ赤に染める私に杏里ちゃんは心配そうな顔で問いかけてくるが、今彼女の問いに答えられる程自分に余裕が無く両手で顔を隠しながら頭を上下に動かした。
―――狩沢さんって、臨也とは違う嬉しい言葉を言ってくれるよね……。
―――言ってくれたら嬉しいな、っていう感じ?
「はい、そんな可愛い愛子ぽんに私からの贈呈品でーすっ!イザイザに見せてあげるといいよ!」
『な、な……っ、何ですかこれ!?』
「…………」
「「??」」
自分の高まってしまった熱を狩沢さんとは反対方向を向きつつ、手で仰いでいると彼女はどこかへと向かうような気配を感じ、
チラ、とそちらへと視線を向ければとても豪華なドレッサーから一つの衣装を取り出し、見せつけるように手渡してくる。
自然とそれを受け取ってしまった事を後悔しても遅く、手の中にある衣装を眺めれば一瞬で、こんな衣装、着られるわけがない―――と判断できるような露出の高いものであった。