折原家
□昔の出来事
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それでも二人は泣き出し、彼も[どうしたんだろうねぇ]と不思議そうな表情だ。
臨也の言葉を聞き、今日一日の事を思い出す。
朝、目覚めた私は二人の幼児の様子を見るがその時までは安定した寝息が聞こえ、優しく一撫でするといつも通りの仕事に取り掛かった。
その時は遅くまで仕事だっただろう臨也も一緒に寝ていたし、彼が起きないという事は二人も寝ていた、という事になるのでここまでは絶対に何もなかった、と言い切れる。
昼、二人の幼児がぐずり始め、もうこんな時間かと離乳食を私と臨也、二人がかりで双子に与え、落ち着かせるように抱っこし、背中を撫でればウトウトと眠ってくれた。
このまま眠ってくれればいいのだが、時々すぐに起きて泣いてしまうので毎日が緊張状態だ。
臨也もこの時ばかりは疲れた表情をしていたし、いつもなら起きている時間にも寝てしまうぐらいだった。私もウトウトとソファの上で転寝(ウタタネ)すれば泣いた二人に起こされる。
一旦落ち着いた二人の頭を撫でつつ、私も臨也も[やっとだね]とホっとした表情で呟いた。
しかし、問題はその後だ。
昼と夕方の間の時間。洗濯物を畳んだり、それを片付けたりしている時、突然大きな声で泣き出し、慌てて二人に駆け寄った。
それが今の状況なのだが―――何に問題があったのだろうか。ご飯を与え、オムツも変えた。どこか調子が悪そうにも見えないし、そんな傾向もなかった。
『どこかでぶつけたのかな……』
怪我をしたようには見えないが、まだ赤ん坊に近い幼児の二人だ。大人にとっては何でもない事かもしれないが、二人にとっては命に係わる事かもしれない。
「……怪我はしてなさそうだけどねぇ」
臨也は二人の服のボタンを丁寧に剥がしつつ、慎重に見つめるがそこには痣や傷といったものは見られない。
「何か無くした、とかない?二人がいつも身に着けてるものとか……」
『身に着けてるもの……?』
首を傾げつつも彼に言われた通り、二人が身に着けている物を考え―――フ、と気付く。
二人が着ている服は簡単に脱がせられるものとなっており、動きやすい服だと臨也が選んで買ってきたものだ。
その二人の足元―――片方だけ上手に脱げ、筑紫は右足を紫苑は左足の靴下が脱げており、二人合わせたら丁度いいんじゃないかと思うぐらいだ。
どうして靴下なんて履かせているのかよく解らないが、臨也が[子供の靴下って可愛いよね]とかいう理由で毎日履かせていたものだった。
二人もそれがお気に入りのようで、靴下が床に落ちていると[あー]とパンパンと叩いて落ちてるぞ、
なのかそれともこれが履きたい、と言っているのかまでは解らないが、とりあえず私を呼ぶのだ。
「二人とも、俺が買ってきた靴下気に入ってくれてるんだ。買ってくる甲斐があるってものだよねぇ」
『暑そうに見えるんだけどなぁ……』
臨也は僅かに嬉しそうに口元を釣り上げつつ、ソファの下に落ちていた靴下を拾って元の二人の足元に戻せば、
先程まであんなに泣いていたのが嘘のようにきゃっきゃ、と嬉しそうにしている。私のこの不安感やどうしようもない感情はどこへ持って行けばいいのだろうか。
『はぁ……良かったぁ……』
「お疲れ様。何事も無くて良かったじゃないか」
『本当……二人に何かあったらどうしようかと思った……』
まだ二人はハイハイやつかまり立ちが、やっとできるようになったぐらいの年齢だ。
そんな時が一番危ないのだろうし、怪我をして学ぶ、なんていうが親としては勿論怪我をして欲しくないわけで。