折原家

□お留守番の日
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いつも子供達の相手はしてくれるものの、鬱陶しそうな顔をする女。

そんな彼女が二人を見てくれるなんて―――と思っている所で目的の人物が玄関から現れ、[終わったわよ]と淡々と呟いた。


「ご苦労様、波江さん」


旦那―――折原臨也は女が持っていた薄い茶色の封筒を受け取り、その中身を確認すると口元を釣り上げるだけの小さな笑みを浮かべる。

女は臨也の言葉も右から左へと受け流したのか、聞き遂げた後すぐにソファに腰掛け、自分のパソコンを開いて次の仕事に取り掛かっているようだ。


―――本当に、いいのかな……。


『な、波江さん……』


駄目ならば駄目でいいし、良いのならせっかくの機会だ、使わせて貰おう―――そう思いつつ、彼女を呼ぶとこちらに目を向ける事無く[何かしら]と返事を返す。


『あ、あの……二人を見ててくれるって本当ですか?』

「ああ、もう臨也から聞いたのね。それならこちらから話す必要はないようね。ええ、そうよ。一日限り、貴女の子供達を見ててあげるわ」


女―――矢霧波江さんからそんな言葉が出てくるとは思わず、私はきっと物凄く驚いた顔をしていると思う。

臨也は少しだけ得意そうな顔をしており、言った通りだろ?とでも言いたそうだ。どうして彼女が―――


「ママー!ぼくのぬいぐるみ、ちらなーい?」


波江さんに問いかけようとした瞬間、お昼寝をしていたであろう紫苑が目を擦りながら起きてきてこちらへと向かってきた。


『紫苑のぬいぐるみ……?きちんと探した?』

「さがしたーでも、ないもん!」


寝起きだからか、どこか不機嫌の息子を抱き上げつつ、頭を撫でると少しだけ安心したのかぐりぐり、と頭を擦らせて甘えている。


『じゃあママと一緒に探そうか』

「うん……」


波江さんの事は気になるが、まずは自分の子供が優先だ。

抱き上げつつ、紫苑が来た道を引き返すように戻っていき、中に入れば―――


「紫苑っ!あった!ぬいぐるみしゃんあったー!」


大きなぬいぐるみを見せつけるようにばたつかせているもう一人の子供の姿があり、手には紫苑のお気に入りのぬいぐるみが握られている。


「ぼくのー!」

「ちた、おちてた!」


すぐに紫苑を降ろせば、とてとてと走っていき、ぬいぐるみの存在を確認するように抱きしめている。


『何か言う事あるよね?紫苑』

「ありがとー」

「うん!」


ぬいぐるみを抱きしめつつ、嬉しそうに自分の頭を擦り付ける紫苑と寝起きのふにゃ、とした顔で自分のぬいぐるみを手探りで探す筑紫。
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