折原家

□お留守番の日
1ページ/10ページ

<お留守番の日>


新宿 某マンション

愛子視点


『……本当に二人でお留守番できるの?』

「できるっ!おるしゅばんできるもん!」

「おねえたんだからできるもん!」

「ママ、早くしないと時間無いんじゃない?」


二人は手を上げてニコリと返事する。

それが逆に心配で―――やっぱりやめた方がいいんじゃないかと思うが、旦那はそれを断るかのように私を急がした。


『わ、解ってるけど……!』

「二人ができるって言ってるんだ。信じてあげるのも親なんじゃないのかい?それに……今日は波江さんが一緒に居てくれるんだし」


渋る私に旦那は目線をソファに腰掛ける一人の女に目を向け、口元を釣り上げる。視線を感じたのか女は無表情で[何よ?]と手は止めずにこちらに目を向け、あまり興味はないようだ。


「ママ!なみえしゃん、いっしょいっしょ!へいき!」

「なみえいるもん!なみえねーいっぱいいーっぱいあそんでくれるの!」


二人はお留守番、というものを経験した事がないので元気に、そして楽しそうに言うが後の事を考えるとやっぱり―――と決断に迷ってしまう。

こうなった経緯、それは数日前に遡る。

―――――――……

数日前 某マンション

愛子視点


「ねえ、愛子。デートしようよ、デート」

『……え?デート?』


唐突だった。

何もない日常。

昼下がり、ご飯も食べ終わり、のんびりとした空気の中で旦那が私を呼ぶ。答えるようにそちらへと向かえば、その言葉は発せられた。

旦那が何を考えているか、なんて解らないが、その言葉を噛み砕くように、そして意味を考えるように繰り返せば、頷いて肯定する。


「そう、デート。子供達が生まれてからあんまり行ってなかっただろう?だからさ、気晴らしにどこかに出掛けない?」

『……二人はどうするの?』


5歳になったとはいえ、まだまだ小さな子供だ。

そんな子供がどれだけの時間か解らないが、二人で留守番しなければいけない。置いていくのは簡単だろう。


――「すぐに帰ってくるから」


そう言えば二人はグズるかもしれないが、納得し、行かせてくれるだろう。だが、帰って来た時―――もし部屋が荒らされていたら?泥棒や恨みを持った人間が二人を誘拐してしまったら?

たくさんの可能性が考えられ、怖くて留守番なんてさせられない、と思っていた私だったが―――


「うん、その事なんだけどね。波江さんが、特別に見ててくれるんだって」


旦那の発せられた言葉が一瞬理解できなかった。


―――え?

―――誰が?


固まる私とニコニコと笑っている臨也。

今この場にいない人物を想像し、あの人が?と純粋に思ってしまった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ