折原家

□大切な日
2ページ/19ページ

これは見世物じゃないんです―――そう思いながら臨也の腕を引っ張れば、案外あっさりと諦めたようで[次は何を見ようか]なんてのんびりと立ち上がった。

彼に遊ばれているようにも見えるが、こうやって臨也と一緒にどこかに出掛ける、という行為だけで楽しくて―――笑顔を溢せば、彼は[楽しそうだねぇ]と同じように笑ってくれる。


「二人のプレゼント、何にするか決めた?」

『うーん……どうしよう……』


たくさんの玩具。たくさんの雑貨。

見ているだけで楽しいのだが、二人の誕生日プレゼント―――となるといまいちパッとしない。確かに全てが魅力的で喜んでくれるだろう。

笑顔で[ママ、ありがとー]と抱き付いてくれるだろう。だが、何かが違うのだ。


―――何だろう……。


考えて見ても解らなくて―――首を捻りながら考えていると臨也は一つの提案を持ち出した。


「池袋の方にでも行ってみるかい?もしかしたら君が思い描く、二人へのプレゼントが見つかるかもしれないよ?」

『……そうかな』

「試してみないと解らないよ?見た目が変な料理でも、味は絶品だった、なんてよくある事なんだから」


臨也が行きたいだけなんじゃ―――とは思ったが、確かにそうかもしれない。

新宿だけで探す―――それは視野を狭める事になるかもしれないし、見つからなければ、またこちらへと戻ってこればいいだけの話だ。

彼の言葉に肯定で返し、私達は池袋へと向かう電車へと向かった。その間に時間は流れ、そろそろお昼の時間帯になる。

何か美味しいものでも食べたいな―――そんな事を考えていると、臨也も私と同じ考えだったらしく、お腹を押さえながら口を開く。


「あっちに着いたらお昼ご飯にしようか。何がいいかな」

『うーん……臨也は?』

「君の意見を聞いてるんだけどなぁ。まあいいや。じゃあ―――」


―――――――……

池袋 某ラーメン店

愛子視点


『臨也がラーメンなんて珍しいね』

「そう?俺だって時々こういうものが食べたくなるさ」


池袋駅から数分。

見慣れた光景が広がっており、人通りも多い繁華街で見つけた綺麗なラーメン屋さん。

ラーメン屋、と聞くと小汚いイメージがあるのだが、中はカップル同士がラーメンをすすり合って食べている姿もあり、デートスポットとしても最適のようだ。

何にしようか―――メニューを見ながら考えていると、臨也は既に決まったようで[決まった?]と問いかけてきた。


『まだ決まってない……。とんこつラーメンも美味しそうだよね、でも、こっちの醤油ラーメンも捨てがたい……』


優柔不断な私は決める事ができず、写真を見ると新メニュー、と書かれたラーメンが大きく乗っており、それも美味しそうに見えてくる。

そんな私を見ているのが楽しいのか、臨也は絶えず笑顔でこちらを眺めており、恥ずかしくてメニュー表で顔を隠す私。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ