折原家

□大切な日
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<大切な日>


新宿 某雑貨店

愛子視点


『二人にバレないようにしないと……』

「保育園で祝ってもらうんだろう?俺達が隠す必要はないと思うけど」


子供達はきっと楽しく友達と遊んだり、お昼寝をしたりと保育園生活を満喫しているのだろう。

そんな中、私と臨也はもうすぐ誕生日である子供達へのプレゼントを買いに来た、というわけだ。


たくさんの雑貨が並ぶ中で、子供達への誕生日は何がいいか―――なんて考えていると臨也が何かを見つけたようで[来てみなよ]と私を呼んでいる。

そちらへと向かえば、楽しそうにライオンとウサギのぬいぐるみの形をした指を入れて遊ぶ玩具を両手に嵌めて[どう?]と問い掛けてきた。


『どう、って言われても……』

「つれないなぁ。こっちが俺でこっちが愛子だよ」

『……私、食べられるの?』


右手に嵌まる、ライオンを自分だと言い、左手に嵌まる、ウサギを私だという臨也。

肉食系であるライオンはウサギや鹿などの肉を食べる為、当然のように私は臨也に食べられてしまう、という事になる。

だが、臨也は―――


「可愛いものが好きなライオンが居てもいいんじゃないかな。全てが全て、ウサギを食べるなんてつまらないだろう?」


と口元を釣り上げ、ライオンの口を開けるとウサギの首元らへんに噛みつく仕草をする。


『そう、だけど……ライオンだって生きる為なんだから』

「そうだね。人間だって豚や牛、鳥を食べて生きている。それに魚や……虫を食べるところだってある。ライオンと比べたら人間はどれだけの命を食べて来たんだろうねぇ」


自分達が生きる為に他の命を食べる。

それは仕方ない事なのかもしれないけど―――中には[これが嫌い]という理由で残してしまう人間だっているのだ。

命を食べて生きている―――そういう感覚を、いつしか人間は忘れてしまっている。そして、その感謝を込める為に[いただきます][ごちそうさま]という言葉があるというのに。

臨也はウサギとライオンに飽きたのか、それをもとあった場所に戻し、面白いものがないか探しているようだ。


「まあそんな事はどうでもいいか。おもちゃ屋っていうのも見てるだけでも楽しいねぇ」

『うん、色々見た事の無いものが多いから楽しい』


小さな子供達が飽きない為の、大人達の工夫。

ずっと遊んでもらえるように―――そういう願いを込めて、たくさんの玩具が売られ、そして子供達へと流れて行くのだ。

臨也は小さな子供が遊んでいたであろう積み木を見つけては上に乗せ、[どこまで上に乗せられるか勝負しない?]と子供のようにはしゃいでいる。


『怒られるよ?』

「いいじゃないか。大人が子供の玩具で遊んじゃいけない、なんて誰が決めたの?」

『……そうだけどさ……』


確かに誰かが決めたわけではない。

だが、大人は小さな子供が遊ぶものだから―――という簡単な理由で[それはおかしい]と決める。

しかし―――未だにここで遊んでいる子供達が不思議そうな顔で[ママーおっきいおにいちゃんがあそんでるー]と報告している姿は聞いているこっちが恥ずかしくなる。
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