折原家

□散りゆく花
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「……本当、あの子達の行動は先が見えないから面白いんだけど、流石に花火セット20個はいらないよねぇ」

『……は?な、何で……花火セット20個!?』


どれだけやるつもりだったんだ―――そう問いかけるつもりで口を開けば、臨也はチャイムに応答しつつ、財布を持って玄関へと向かっていく。

それにしても早すぎじゃないか、とは思ったが、今の季節だ。どこも花火セットなんて山のように売っている場所だってあるだろう。

20個ぐらいならすぐに集められるのかもしれない―――そう自分に納得させ、支払いが終わるのを待っていると―――


「紫苑、君が大きくなって働くようになったらこのお金は返してもらうからね。俺に借りた事を後悔しなよ?」


たくさんの花火セットが入った段ボールを抱えた臨也が注意するように犯人である我が子に注意すれば、[えー]と嫌な顔をしつつ、姉の後ろに隠れている。

反抗するもののやはり臨也は怖いらしく、モジモジと[だってだってぇー]と言い訳をしていたが、彼は聞いていないかのように段ボールを机の上に置いた。


「あ、それとさっきのママの質問だけど俺がさっき見てたお店は、10セット単位で販売してるんだよ。

10セットじゃ4人でやるには物足りないし、多すぎても湿気っちゃうだけだからそんなにいらないだろう、って考えてた時に紫苑#がエンターキーなんてものを押すから結果がこれだ」

『10セットでも多いと思うけど……』


1セットじゃ流石に少ないかもしれないが、10セットなんてあったら私の知り合いを合わせて丁度いいぐらいの量だ。

それなのに20セットなんて―――考えるだけで疲れてしまいそうだ。それに色々な種類があれば楽しめるかもしれないが、同じ種類が20セットだ。


―――……これは竜ヶ峰君達にお裾分けした方がいいかも……。


こんなにあるのだから半分ぐらいはお裾分けしても困らないと思うのだが、臨也はじ、と私の顔を見つめ[駄目だからね]と呟いた。


『いいじゃん。こんなにあっても湿気るだけだし、途中で飽きるでしょ?パパも紫苑も筑紫も』


臨也が飽きるのなんて本当にすぐだ。

ほんの少し何かをしていただけで[飽きちゃった]と放り投げ、また違う事に熱中する。


それに似たのか紫苑の玩具に飽きるスピードが段々と早くなっており、[これやー]と言って遊ぼうとしない。

それに筑紫でさえ、弟には劣るがすぐに飽きてしまう。そんな飽き性の三人が花火なんて単調作業のようなもの、ものの数分で[あきたー]と言って終わりそうだ。


―――こんなにたくさんの花火、消化できるわけないじゃん……。


花火はやった記はないが大体の流れは掴んでいるつもりだ。

火を点け、火花が消えるまで眺めていれば綺麗な花火はすぐに終わってしまい、また次の―――となるのだが、同じようなものであればまたこれか、と私でさえ飽きてしまいそうだ。

たくさんの人数が居た方が絶対に楽しいと思うのに―――そう私は考えるのだが、臨也はほかの人達を呼ぶ事に反対のようだ。


『門田さんとか竜ヶ峰君とか呼んだ方が楽しいよ?』

「……俺は家族で楽しみたいのになぁ。君はそう事を言うのかい?ならこれは全部君が処理してくれればいいし、呼びたいのなら呼べばいい。言っておくけど俺は参加しないから」

『臨也……』


せっかく子供達がたくさんの人達と触れ合える機会なのに―――臨也は不機嫌な顔をして無視するかのようにテレビを点け、ソファに腰掛けた。
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