折原家

□親子遠足
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「いつ行くの?」

『えーと……あった。5月28日月曜日だって』


臨也はその紙を返しつつ、問いかけてくるので私は[遠足のお知らせ]の紙を読むように目をそちらに向け、時間などを細かく話すと[そうなんだ]と理解したように背を倒した。


「それで……ママは一緒に行くの?その親子遠足」

『え、うーん……行きたいな、って思ってるよ?でも、帰ってくるのが夕方だから……』


朝ご飯は一緒だとしても昼ご飯は臨也一人、もしくは波江さんと食べてもらわなければいけない。そうなると後々色々と面倒なのだが、親子遠足は親と子が一緒に行く遠足だ。

両親が一緒に行くなんて―――そう考えた所で[遠足のお知らせ]の下の応募用紙のようなところに丸を付ける部分があり、[父親or母親]と書かれているのを見つけた。


―――これって……父親でも母親でもどっちでもいいって事、だよね……?

―――ていう事は……。


私が筑紫か紫苑のどちらかの方に行き、臨也がどちらかの方に行けば4人皆で行けるのではないか―――そう考える。

それに双子は組が違うし、[遠足のお知らせ]は2枚ある。という事は―――そんな事を考えて臨也に話せば、[最初からそのつもりだよ]と呆れたような声で答えを返された。


「ママだけ、なんて許さないよ。それに……俺一人だけ待ってるなんて嫌だからねぇ」

「パパ、さびしいのー?」

「……パパが寂しいって言っちゃ駄目なのかな?俺はできればママと一緒に水族館を回りたいと思ってるんだけどなぁ」


いつでもどこでも臨也の寂しがり屋は発動されるらしく、既に子供達にもバレているようだ。

それを隠す気の無い臨也に呆れつつも、彼の寂しがり屋はいつまで経っても治る事は無いのだろうと思った。

それでも、自分と一緒にいたい―――そう言ってくれる事に若干頬が熱くなってしまうのだが。


「えーダメー!ママはぼくといっしょにまわるのーっ!」

「あたしとまわるんだからパパも紫苑もダメーっ!」


寂しがり屋な父親、まだまだ甘えたりない双子―――そんな3人に振り回されるのも悪くないと思う私は、きっとこの幸せに浸りきっているのだろう。

いつ壊れるか解らない[日常]に怯えながら。


『じゃあ、書いておくね?』

「うん。どっちがいい?まずは二人の組に別れないといけないんだろう?」


ボールペンを臨也がいつも座っているパソコンディスクから取り出すともう一度ソファに腰掛け、応募用紙のような場所に名前を書こうとする私。


『あ、そうか。……二人はどっちがいい?』

「「ママっ!」」


だが、臨也の言葉を聞いて一旦名前を書くのを止め、双子に問いかけると息がピッタリとでもいうかのように同じタイミング、同じ発音で私を呼んだ。


「……一人は俺の事を選んでくれてもいいんじゃない?そんなに素直に答えなくても良いじゃないか」


双子に選んでもらえなかった事に僅かにダメージを受けているようだ。

いつもなら苦笑を浮かべた後、すぐに笑みに戻る臨也であったが、今回はいつまでも苦笑のまま笑顔に戻る気力はないようだ。
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