折原家

□親子遠足
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<親子遠足>


5月下旬 新宿 臨也のマンション

愛子視点


「とーとただいまー!」

「パパただいまー!」

「おかえり、二人とも。保育園は楽しかったかい?」

「「うん!」」


いつもの午後。

双子は自宅の扉を重そうにしつつもゆっくりと開け、玄関で待っているであろう父親に飛びつくと満面の笑みで[ただいま]と挨拶をする。

それに父親もとても優しげな表情で双子を抱き上げ、頭をコツン、と当てつつ[おかえり]といつもの挨拶を返した。


『ただいま、パパ』

「おかえり、お疲れ様。今日、何があったのか教えてくれる?」


彼は保育園であった事、行事などにはとても敏感だ。自分があまり参加できない為か、様々な事を聞きたがり、何もない日でも[二人はどうだった?]などと様子を聞いてくる。

それに話をする私としても、あの時は楽しかった、あの時は危なかった―――などと色々な事を思い返せてとても楽しい。

今日あった事を話す為、双子の父親―――折原臨也と抱き上げたままの双子、そして私の4人はリビングと呼ばれる場所まで歩いていき、ソファに腰掛けた。


いつものように二人はテレビの前を陣取るように座り、その隣に私と臨也が座る。

いつの間にかこうやって座るのが当たり前になり、少しでも場所が違うと[ちーがーうー!]と怒って抗議するぐらいだ。


「それで……今日は何があったの?」

「あのね、あのね!すいぞくかんいくの!」

「おさかなしゃんいっぱいみるー!」

「?水族館……?」


楽しみで仕方がないとばかりに双子の弟―――紫苑は立ち上がって臨也の膝に小さな手を置いてピョンピョンと跳ねて説明をするが、

伝わっていないようで双子の姉―――筑紫もそれに付き足すように言葉を吐き出すが、それでも彼には解らないようだ。


「うん!おさかなしゃん、いっぱいいるんだよー!」

「たのしみー!たのしみー!」

「それぐらいは俺だって解るさ。……それで、どうして水族館に行く事になったの?」


臨也が首を傾げている為、双子は彼が水族館を知らないとでも思ったのか[おさかなさんがいるところ]と言えば、臨也はそれにムス、とした顔で言葉を返した。

これではいつまで経っても話が進まない、と思った私は小さく溜息を吐いて双子の説明を付き足すように言葉を紡ぎ始める。


『……今度、保育園で親子遠足に行くんだって』

「……それで、水族館に行くって事?」

『そういう事らしいよ?場所はサンシャイン水族館だって』

「池袋にあるあそこか……。新しくなったらしいし、保育園の遠足にはもってこいの場所ってわけだね」


私は双子の鞄から[遠足のお知らせ]と書かれたぐちゃぐちゃになった紙を取り出し、綺麗に直しながら臨也に渡すと目を細めながら[へえ]と呟く。

彼の興味のありそうな話題は大体表情を見ていれば解る為、心の中で小さく笑いつつ彼を見つめていた。
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