折原家
□初めてのおつかい
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「それじゃあ二人とも、行ってきてくれる?パパとママはここで待ってるからさ」
「うん!」
「おつかいしゅるー!」
臨也はそう言うとソファに腰掛けどこか余裕の表情だ。
いつもなら[危ないから]とか色々理由を付けて行かせないくせに、今日の臨也はまるで他人の子供が初めておつかいに行くのを見届けているかのようだ。
―――心配じゃないのかな……。
あんなに大切にしていた筈なのに―――少しだけそんな事を思いつつ、彼は双子に手を振っており、その姿はとても[過保護]という言葉は似合わない。
双子を送り出した臨也は一息つくかのように台所へと向かい、コーヒーを淹れ、戻ってくる。
いつもなら少し双子が離れるだけでそわそわしているのだが、これもまたとても余裕そうな顔だ。
『ねえ、臨也?』
「ん?何かな?」
『二人とも、心配じゃないの?』
気になった私はコーヒーに口を付けている臨也に問いかけてみれば、どこか意味を持った笑みで返され、疑問は浮かぶばかりだ。
―――怪我しないといいんだけど……。
―――――――……
同時刻
視点なし
「がようちとおりがみー!」
「2まい、2まい!」
双子は自分達の家から出るといつも保育園の帰りに寄って通るスーパーを目指し、歩いていた。
マンションを一歩出るとそこは双子にとって母親のいない初めての世界であり、何もかもが大きく見えてしまう。
いつも通る通りが、よく見かける人々が、自分達を[通行の邪魔]だと言っているかのようだ。
双子はあれだけ意気込み、行きたがっていた外の世界に圧倒され、小さな体はどんどん小さくなっていく。
怖い、パパ、ママ助けて―――そう言っているかのように双子の顔は険しくなっていった。
「ママぁ……」
「……っ、がようちとおりがみ2つかうのっ!」
紫苑はついに座り込んでしまい、怖い怖いと涙を目に浮かべていたが、筑紫はそんな弟を見て、
自分がしっかりしなければ―――そんな姉特有の思いが生まれたのか涙を服で拭うと紫苑の手を引いて立ち上がろうとする。
「こわくないもん!」
「で、でも……っ、ママもパパもいないよぉー?」
二人にとってはまだまだ両親が全てで―――いつも傍に居て優しく包んでくれる母親。
危ない、そう言って守ってくれる父親―――そんな二人が双子は大好きなのだ。
「パパ、がようちとおりがみないとこまったってなるもんっ!」
「……こまった、なるのや……っ」
「じゃあ、かいにいこー?」
「……うん」
父親の困ったような顔を思い浮かべたのか双子―――筑紫と紫苑は手を取って一歩を踏み出す。