折原家
□初めてのおつかい
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―――行動力のある人になりたい……。
彼のように―――何事も実践できる人間になれたらいいな、と思いつつもお使いをさせるにも何を買って来させるのか迷っていた。
―――特に欲しい物があるわけじゃないし……。
―――とか言って自動販売機で売ってるようなジュースとかじゃ二人が納得しないだろうし……。
テレビの中のお母さん達は事前に話し合って[これがないから買ってきて]だったり、
[お父さんにこれを買って届けて]などと子供達に頼むのだが、今回は行き当たりばったりの[初めてのおつかい]だ。
特に用意も無いので本当に自動販売機で売っているジュースにしようかと迷っていると―――
「筑紫、紫苑。いつも買い物に行くスーパーに100円均一のお店があっただろう?そこで、画用紙と折り紙を買ってきてくれないかな」
と今思いついたかのように、そして本当に困ったような顔をして二人に頼む臨也。
画用紙と折り紙なんて何に使うんだろう―――そう疑問に思う反面、彼は彼なりに考えがあって頼むのだろうと判断し、口に出す事はやめた。
「がようちー?」
「おりがみー?」
「そうそう。画用紙はどんなのでもいいんだけどね、折り紙はたくさん入った大きな方がいいんだ。それを2つずつ、買ってきてくれる?」
二人も私と同じような反応をしているのか、どうしてそんなものを買うのだろうか、と首を傾げている。
だが、そんな私達の疑問は解消されないまま臨也だけは淡々と、そして解り切った表情で二人に首に掛けられる財布を渡し、500円ずつその中に入れた。
「500えんー?」
「うん、残りは好きなものを買ってきていいよ?それはお前達のお駄賃だと思ってくれればいい」
[お駄賃]だと言う臨也に二人は財布に入った500円を嬉しそうに見つめており、子供達にとってはまだ500円というお金は大金に思えるのだろう。
「おかちかうー!」
「おもちゃ、いっぱいかえるねー!」
「でも、きちんと目的の物を買う事。それができないなら、もうお菓子も玩具も買ってあげないからね?」
「「はーい」」
二人は臨也の言葉を聞いているのか、自分達に持たされた財布を眺め続けており、返事も適当な気がしたので私は不安に思い、
問いかけてみると[がようちとおりがみー!]と買ってくるものは解っているようだ。
それなら安心だ―――そう安心するのも束の間、筑紫が[なんまいだっけー?]と首を傾げている姿を見て不安は重く伸し掛かった。
「2つずつだよ。解ってる?間違えたらもうお使いに行かせないからね?」
「えー……わかったー」
「2まい、2まい……」
彼の言う[もう行かせない]という言葉は私にとっても、そして二人にとってもそれが確実に現実になるであろうと理解する事ができる言葉であった。
それを解っている二人は反抗しつつも小さく頷き、首からきちんと財布をかけ、玄関に向かって歩き出す。