折原家
□あの人の誕生日
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「甘やかせすぎたかな……。あまり一緒に居られないからせめて、と思ったんだけどそれが裏目に出たみたいだ」
『そういうつもりはないと思うよ……?』
初めての子供、初めての子育て、どう育てればどんな子供になるのかなんて解らない。
臨也だって悪気があって子供達におもちゃを与えてきたわけじゃないのは今の言葉で解る事だ。
それでもやはり子供達にとっては新しい玩具を買ってくれる、と思われているのかもしれない。
厳しく育てるのも甘やかして育てるのも私達の自由だ。それで後悔するのも私達なのだが。
「それでもさ、甘やかしてるのは解ってるつもりなんだ。でも……あの子達が可愛いと思うから、そうしたいと願うから叶えたくなるのが親、っていうものじゃない?
……こういう考えも親にならないと解らないものだよねぇ」
『……そうだね。いいと思うよ?臨也がそうしたいって思うなら』
彼が思う事。
親がしてあげたい事。
それは親によって変わるだろう。
教育に真面目な親であったのなら子供にはエリートと呼ばれる学校に行かせたいだろうし、小さい頃から習い事などにも通わせる親だっているだろう。
そんな中で私と臨也は特に何かをしているわけでもなく、ただ日々の中を大事に大事に過保護と呼ばれても過言ではない程に大事にし、大切に育てている。
それは私と臨也が[親]という愛情を受けていないからなのか、それとももっと別なのか解らないが。
人を大切にする事、大切にされる事、そんな単純なものを手に入れられなかった私達。それが跳ね返り今、私達は子供達を愛情を注ぎ、育てている。
「君の意見はどうなんだい?俺だけが決めるんじゃ母親としての威厳がないじゃないか。もっと求めたっていいんだよ?それが……人間なんだから」
『……うん。でもね臨也、私はこうやっていられる時間や子供達と一緒に居られる事が幸せだから……大きな怪我とか病気にならなければいいかな、って』
子供達にどうなって欲しいのか―――そんな事、私だって解らない。
我儘になったり、不良になったり、登校拒否になったり、働く事が嫌になったり、そういう事は一度経験すれば解る事だと思う。それがやってはいけない事なのだと。
短い人生だ、法を破る事ではなければ何でも好きにやればいいと思う。チャレンジする事、それが一番大切なんじゃないかと思うが、臨也は[それは駄目でしょ]と口を挟む。
「それは駄目だよ、愛子。せっかく二人は双子っていう運命で生まれてきたんだからもっと双子にしかできない事をやるべきだと思うんだよねぇ」
『……双子にしかできない事?』
「そう。俺らじゃ到底できない事でも双子ならできるような気がしないかい?」
『……九瑠璃ちゃんと舞流ちゃんならね』
一卵性ならばきっと色々な事ができたのかもしれないが、生憎二人は二卵性であり、顔だって似ていない。時々一緒に言葉を発する事はあっても、考え方も性格も全く違うのだ。
「人間には色々な可能性を秘めているんだからさ、九瑠璃と舞流みたいじゃなくてもできるのかもしれないよ?」
『はいはい。できたらいいね』
そんな夢みたいな話ができる臨也はやはりいつまでも子供のようで。
今日の誕生日で30代に突入しようとしている事に気付いているのだろうか。まあ彼ならば気付いていたとしてもあまり変わらないような気がするが。