折原家
□春の出来事
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『……池袋でいいんじゃないかな』
「やっぱり君もそう思うよねぇ!まあ俺としてはシズちゃんに会わずにお花見ができれば上出来、って感じかな」
何を言っても結局臨也は池袋でお花見がしたいようだ。
わざわざ問いかけて来なくてもいいような簡単な問いを聞いてくるくせに最後は勝手に決めてしまうのだから、わざわざ聞かなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。
だが、それでも聞いてくれるのは嬉しい事だし、話が盛り上がるというものだ。臨也は私の答えに顔を明るくし、不敵な笑みに変えて携帯電話に視線を向けている。
―――調べものかな……。
「……愛子ってお寺とか好きかな」
『?どうして?』
そろそろ本格的に保育園に行かなければ二人が[おそーい]と言って怒るので、
出る支度をしつつ、忙しそうに動いていると、臨也は携帯電話から目線を外し、問いかけてきた。
「今名所を調べてみたんだ。やっぱり綺麗な桜を見ながら歩きたいからねぇ。……それで、一番人気なのは法明寺らしいよ?」
『臨也は行った事ないの?そこ』
新宿に住んでるとはいえ、元々は池袋の出身だ。どこに何のお店があるか、ぐらい手に取るように解ってもおかしくない。
だが、らしい、という臨也らしくない答えに私は疑問に思い、素直に問いかけると彼は―――
「俺がお花見をする人間に見えるかい?」
と淡々と答えるので小さく[見えない]と呟いた事に彼は気付いただろうか。苦笑を浮かべる私と笑みを浮かべつつ、もう一度携帯電話に視線を戻す臨也。
『……じゃあ子供達、迎えに行ってくるね?』
「うん、気を付けて行ってらっしゃい」
『いってきます』
時間も丁度いいぐらいになった為、私は上を羽織り、出る前に臨也に一言告げ、玄関に向かって歩き出す。
子供達に喜んでもらう為に自分の情報網を使ってくれる彼に対して感謝と幸せに包まれながら扉を開き、もう一度[いってきます]と告げてマンションから出て行く。
―――喜んでくれるといいなぁ……。
家族みんなでお花見。
新宿の街にも桜が点々と咲いている場所があり、見ごろを迎えている。ヒラヒラ、と落ちて行く桜を眺めながら私は―――ゆっくりと口元を釣り上げた。
――――――……
某保育園内
愛子視点
「あ、筑紫ちゃんのママ、こんにちは」
『え……ああ、こんにちは』
二人を待っている間、私は携帯電話で友人にメールを送っていると後ろから声を掛けられた。誰かと思い、振り返ってみれば筑紫と仲が良い友達のお母さんのようだ。
「今お迎えですか?」
『はい。マナちゃんのお母さんも?』
「ええ、そうなんですよ。今日は早くに仕事が終わったので」
保育園というのは大体のお母さんは仕事をしていたり、何かと忙しい人が多い。
そんな中で私は家事をして、家でゆっくりしているのだから幼稚園の方がいいのかもしれないが、臨也が家から近いという理由でここの保育園に入れたのだ。