折原家
□野菜嫌いなあの人
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「ごめんね。そういうつもりじゃなかったんだけど……」
と、彼の中で何があったのか解らないが、息を吐き出すとニコリ、といつもの優しい父親といった顔で二人を抱き上げようとするが、
[いやー]と必死で抵抗し、隠れるようにテーブルにしゃがみ込んだ。
「……もう怒ってないから、ね?」
双子がいるところに目線を向けると首を傾け、二人を見つめる臨也だったが、それから逃げるようにテーブルの奥に入っていく双子。
「とーと、こわいもんっ!」
「こわいパパきらーいっ!」
どれだけ臨也が優しい笑顔を浮かべようとも双子は[怖い怖い]といって父親に近付こうともしないので私は仕方ない、とばかりに溜息を吐き出し―――
『パパの所で遊んでおいで』
と一言発すれば、双子は嫌そうな顔でテーブルの奥から臨也の事を見つめていたが、彼が怒っていないと解るとすぐに双子は臨也のもとへ走っていき、抱きしめた。
「……。本当にお前達は……」
そう言いつつも臨也は子供達を抱きしめ返し、ポンポンと背中を叩き、嬉しそうだ。
そんな三人を見つめつつ、私は焼きうどんを完成させ、皿に乗せるとそれをお盆に載せ運び入れる。
『ご飯だよー。ほら、パパは箸を用意して。二人は手を洗ってきなさい』
「解ったよ」
「「はーい!」」
そう声を掛けると臨也は食器棚から箸を取り出し、私が皿を並べ、その間に双子は手を洗いに洗面台へと向かう―――いつもの光景。そんな光景が素朴で暖かくて陽だまりの中にある。
決して豪華なものではないけれど―――そんなところに幸せがあり、夢のような現実が広がっていた。
「て、あらったー!」
「ピカピカー!」
『よくできました。偉い子だね』
手を洗った事を見せに来る二人に笑顔を向ければ二人は笑顔で椅子に座り、私達の到着を待っているようだ。
私も臨也も手を洗うとタオルで水気を取り、双子の前に座る。四人でこうやって揃って食べるのが、臨也が決めた家族ルールみたいなものだった。
「いただきます」
「「いただきまーす!」」
『いただきます』
臨也がそう両手を合わせて食事の挨拶をすると双子も揃って大きな声で挨拶し、私もそれに合わせるようにして挨拶を吐き出した。
ほくほくと湯気が上がった焼きうどんを美味しそうに頬張る双子を笑顔で見つめつつ、自分の焼きうどんを口に運んでいると―――
「ほら、筑紫。綺麗に食べないと駄目じゃないか。あ、こら紫苑、箸はきちんと持たないと駄目だっていつも言ってるだろう?」
と言いつつ、臨也は野菜を器用に私の皿に投げ込み、自分はうどんなどを口に運んでいる。呆れつつ何も言わずにお昼ご飯を食べていたのだが―――
「とーと!ママのおさらにピーマンいれちゃだめーっ!」
と紫苑は気付いていたのか、口からニンジンをはみ出しながら口を開くと臨也は苦笑しつつも[大人だからいいの]と当然とばかりに言葉を紡ぐ。