折原家

□野菜嫌いなあの人
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<野菜嫌いなあの人>


新宿 昼 臨也のマンション

愛子視点


どこかでグゥ、とお腹の鳴る音が聞こえてきた。

その音に一瞬静かになるマンションの一室。しかし、すぐに小さな笑い声の次に大きな声で笑い出す子供達。


「パパ、おなかなったー!」

「とーと、おなかしゅいたのー?」

「ちょ……どうしてお前らはそういう事を簡単に言うのかなぁ。全く」


旦那としては隠しておきたかった事らしく、子供達を膝に乗せながら呆れつつ、[そろそろお昼だねぇ]と時計を手に取って呟いた。


「今日は何にするの?」

『人参とピーマンが安かったから焼きうどんかな』


気を取り直したのか旦那である男―――折原臨也は台所に居る私に目線を向け、問いかけるのでニンジンを切りつつ、素直に答えを吐き出した。

しかし、臨也にとってはあまり食べたいものではないらしく、眉を顰めつつ[そう]と興味無いように吐き出したが、どこか機嫌が悪い。


―――子供達を見習えばいいのに。


臨也はあまり野菜が好きではないらしく、インスタントも好きではない。


好き嫌いが激しい旦那に毎日料理をする方も大変だが、好きなものを作った時の臨也の顔は嫌いではない為、

あまり野菜は使わず、他の物を使っていたのだが、子供達の成長にも必要なものが入っている―――

そう聞いた時、私はすぐにスーパーに行って緑黄色の野菜をたくさん買って、臨也にバレないように入れてきた。


だが、好きではない味はすぐに解ってしまう為、私のレパートリーではすぐに品切れになってしまった。

それならば、もう包み隠さずに炒めてやろう―――そう決めて今日のお昼ご飯を作っているのだが、臨也の機嫌はよろしくないようだ。


「パーパっ!ごほんよんでー」

「……紫苑、筑紫に読んであげて」

「え……あ、うん」


擦り寄ってくる子供達に臨也はなるべく笑顔で言葉を紡ぐのだが、態度は料理が出来上がるにつれて段々と冷たくなっていく。

それを感じ取ったのか、子供達も近付いていかなくなり、台所に居る私の方に寄っていくのだが―――


「筑紫、紫苑。台所に入っちゃダメだって何回言えば気が済むのかな?」


と笑顔で叱り、怒るような言葉を発する臨也に二人は息を呑んだように震え、台所から出て行った。


「……、……ごめんなさい」

「……、……はーい」


二人の今にも泣きそうな顔を見たら、いつもなら[悪かったよ]と怒り過ぎてしまった事を謝るのだが、臨也は目を逸らし、自分は悪くないといった表情をしていた。


―――子供達に当たらなくても……。


それ程野菜が食べたくないのだろうか。

それにしてもあんまりではないか、そう思っていると―――
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