折原家
□二つの事を一つに
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それでも、二人の子供からチョコを貰える臨也はとても幸せ者かもしれない。
今日の晩御飯と明日のお昼ご飯、そしてどんなチョコを買うか悩みながらいつものスーパーへと足を踏み入れた。
やはり、バレンタインデー当日とあってか、チョコレート売り場にはたくさんの女の子達が楽しそうに話をしながらチョコを選んでいる。
私もどんなチョコか選ばなければ―――そう考えていると、二人は手を繋いでバレンタインチョコが売っている売場へと走っていき、それを追いかけるように後を追った。
「チョコ!チョコー!チョコいっぱーいっ!」
「チョコえらぶー!」
たくさんのチョコに囲まれ、双子は嬉しそうに選んでおり、可愛いラッピングから少しシンプルな大人のチョコレート、キャラクターのものまで様々だ。
「あたしは……これっ!」
「うーん、うーん……ぼく、どっちにしよう……」
筑紫はすぐに手に持っていた小さなチョコが詰まったお菓子を選び、私の元に持ってきた。
紫苑はまだどれにしようか迷っているらしく、あっちに行ってみたり、こっちに行ってみたりと忙しそうだ。
―――どれにしようかな……。
甘い物はあまり好きでは無かったような気がする。
それならば甘さ控えめなチョコの方がいいのだろうか。それとも思い切ってお酒の入ったチョコレートにしようか。
私も紫苑と同様にあちこちとウロウロしており、他のお客から見たら変な人に見られているかもしれない。
こういう所は私に似ている弟。姉はすぐに自分の好きなものを選び、決めるのは旦那そっくりだ。
根本的な性格はそれぞれ筑紫と私、紫苑と旦那なのだが、そういう微妙な性格は少しずつ違っているようだ。
まだ決められない紫苑と私に、筑紫は[まだぁ?]と不機嫌そうな声で自分のチョコを持ち、待っているようだ。
『ママ、もう少しかかるから、ここで好きなお菓子選んでて、ね?』
「うー……わかったー……」
待たせるのも悪いと思い、筑紫が好きなお菓子売り場の近くまで連れていき、[迷子にならないようにね]とだけ付け足すとバレンタインチョコ売り場へと戻っていく。
―――ウロウロしてないといいんだけど……。
本当なら一緒に居た方がいいのかもしれないが、待たせて不機嫌にさせるのも悪いし、可哀そうだ。
それならば好きなお菓子を選ばせて戻ってきたらそのまま買えるようにしておけば早いと思い、
筑紫をお菓子売り場に残したのだが、私と紫苑がチョコを選び、会計を済ませていると―――
≪迷子のお知らせをします。黒いブーツに白のジャンバーをお召の折原筑紫ちゃんのお母様。折原筑紫ちゃんのお母様。筑紫ちゃんが1階、迷子センターでお待ちです―――≫
そんなアナウンスが流れてきて、やってしまった―――と後悔した。
きっと泣いているに違いない。振り返ったらいつもいる私がいなくて、置いていかれたと思って戻ろうとしたけど戻れなくて―――不安だったかもしれない。
待っていて―――その言葉が逆に不安にさせてしまったかもしれない。急いで紫苑を連れて迷子センターを探せば―――
「ママぁあああぁああっ!」
椅子に座り、女の係員の人と話をしていたのか涙を流しながら[ママぁ……]と呟いている筑紫を見つけ、慌てて声を掛ければこちらに気付いたのか、
涙目で必死に抱き付く我が子の姿。それに罪悪感を抱えながら我が子を抱きしめ、子供の存在を確かめた。温かくて、小さな子供。私の大事な娘。
『ごめんね、筑紫……っ!怖かったね……』
頭を撫でてやれば、やっと落ち着いてきたのか嗚咽を漏らしつつも何とか泣き止んだようだ。