折原家
□二つの事を一つに
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<二つの事を一つに>
2月14日 バレンタインデー当日
愛子視点
「ママー!きょう、ほいくえんでね、アヤちゃんにチョコもらったー!」
「あたしも!あたしも!」
『バレンタインだからかな?』
「ばれ……?」
「なーにー?おかしみたいなのー?」
保育園の帰り道、双子は手を繋ぎながら私は夜の晩御飯を買う為に新宿の街を歩いていた。
鞄からゴソゴソ、と取り出し、ハートマークのチョコレートが入った袋を自慢げに見せる紫苑と、それを見て慌てて取り出し、落としそうになる筑紫。
バレンタインデーという言葉を聞いた事がないらしい双子は首を同じ方向に向け、私に目線を向けるので少しだけ得意げに[バレンタインデー]を語る。
『バレンタインデーっていうのはね、好きな人にチョコレートを渡す日なんだよ。だから、きっと二人が好き、って子がくれたのかもね?』
「アヤちゃん、ぼくのことしゅきー?」
『それは私には解らないかな。今度、アヤちゃんに聞いてみれば?』
「うん!」
私の言葉を聞いて紫苑は納得したのか、満足そうな表情で頷き、それに続き、筑紫が不思議そうな顔で問いかけてきた。
「あたしはマキちゃんにもらった!マキちゃん、あたしのこと、しゅきー?」
『それは友達の証として渡すチョコレートだよ。筑紫とずっとお友達で居たい、って思ってるのかな?』
「あたしもマキちゃんとずっとずーっと、おともだち!」
二人を見ていると学生時代を思い出す。
私もバレンタインデーというものはあまり縁の無かった事だが、旦那と出会い、そういう行事にも少しずつ手を出すようになり、2年生になる頃に一回だけ渡した事があった。
三人はとても嬉しそうにしてくれて作って良かったな―――そう感じた事を思い出し、二人にもいつか感じてもらえればいいな、と思いつつ、スーパーの自動ドアをくぐった。
「ママー?ママはパパにばれっ……えっと、ばれれんたいんあげないの?」
『れが一個多いよ、筑紫』
バレンタインと口にしようとしたようだが、上手く言えずに間違えてしまったようだ。それを指摘しつつ、私は[あげるよ]と口にすると筑紫は嬉しそうに笑った。
「ぼくもとーとにチョコあげるー!」
「あたしもー!パパだいしゅきだもんっ!」
『きっとパパ、喜んでくれると思うよ』
もしかしたら旦那は本気で泣いて喜ぶかもしれない。それもある意味見てみたいような、見たくないような―――複雑な気持ちになった。