折原家
□父親の嫉妬
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――――――……
同時刻 たんぽぽ組
視点なし
「紫苑くんのパパってぜったいカッコイイよね!」
「カッコイイ?とーと、カッコイイの?」
「ママがいってたよー!わたしたちはパパとママのおかおににるって!わたしはママににてるってパパがいってた!」
同じ時間、同じ工作の時間に片方の組と同じ質問をされていた少年。
女の子に[カッコイイ]と頬を赤らませ、鼻を鳴らすように問いかけられているのは少年―――折原紫苑。筑紫の弟である。
保育園内ではこの男女の双子がとても人気で、きちんとした恋愛ではないにしろ、小さな子供が大きな思いを胸にし、誰が双子を奪えるか―――壮絶な戦いが繰り広げられていた。
そんな事を知らない双子はいつも通り母親に保育園まで送ってもらい、楽しい保育園にやってくると担任に好きなものを作るように言われ、
紫苑は粘土をぐにゃぐにゃにして輪っかを作ってみたり、千切って丸めたり、自由に粘土遊びをしている。
「ねーねー!紫苑くんのパパにあってみたいなー!」
「とーとにあうのー?なんでー?」
紫苑の周りをぐるぐると回っているのは母親の影響か、髪を僅かに茶髪に染め、保育園の服を少し崩したものを纏っている女の子だ。
周りの女の子達も紫苑を狙っているのか、茶髪の子供にギラギラと睨むように見つめており、それに気付かない少年は無垢な笑みを浮かべている。
「あってごあいさつしたいなーって!ママがともだちのいえにあそびにいくときは、きちんとごあいさつしなきゃだめだっていってたー!」
「うーん……とーと、おうちにいるかなー」
首を左右に傾け、[うーん]と悩み続ける紫苑に他の女の子達は―――
「紫苑くんがいやがってるー!」
「そうだよ!紫苑くん、ぜったいアヤちゃんのこと、やだっておもってる!」
「紫苑くん、やだっていっていいよ!」
「…………」
女の子数人が喧嘩しているのを見て、紫苑はどうしたらいいんだろうとまるで他人事のように見つめていると、
その場面を発見した担任が[仲良くしなさい]と言って、注意を呼びかけた。
それに女の子達はしょんぼりとした表情で戻っていき、アヤと呼ばれた女の子だけは諦めきれないのか、紫苑の周りをウロウロしている。
「ねー?紫苑くんのおうち、あそびにいきたい!ね?だめー?」
「うーん、いいよ。とーといそがしいからおじゃましちゃダメだよ?」
「やったぁ!」
「……。でも、ママがあそぶときはみんなであそびなさいっていってたからみんなであそぼー!」
はしゃぐアヤに紫苑は先刻の女の子達の事を思い出し、そういうと彼女は不服そうに[えー]と言うが、少年が[じゃあいいよ]と言って話を止めようとする為、仕方なく了承するアヤ。